一進一退が続く新型コロナウイルス、この対策にうってつけとされるのがダチョウ抗体です。ダチョウ抗体を配合したリップマスクが発売され、クレアホールディングス(1757)の株価が高騰しています。この高騰に際し、クレアを巡る株の売買が少々怪しげなことが噂されており、「インサイダー取引」疑惑も浮上しています。
- ダチョウ抗体の影響は絶大
2020年6月、クレアHDの子会社であるクレア株式会社と、株式会社ジールコスメティックスの間で、商品販売に関する売買基本契約書が締結されています。ジールコスメティックスは新型コロナウィルスに効果があるとされるダチョウ抗体を用いたリップマスクの開発に成功し、医療機関への提供を行っています。
クレアの株価はそれまで20円前後でしたが、この報道に伴い、約9倍の187円まで一気に上昇したのです。この株価上昇を前後する形で、クレアの大株主であるMTキャピタルマネジメント(小田祐次社長)とオリオン1号投資有限責任組合(岡本武之社長)、株式会社SEED(猪俣秀明代表取締役)、松林 克美氏らが株式売買を行ったことで、その都度筆頭株主が変わる事態を呼びました。
その後、商品に関する情報は出てきておらず、株価は60円台~80円台を行き来する状態です。
- インサイダー取引とは何事か
きな臭い動きを見せたこともあってか、証券取引等監視委員会からの要請に応じる形で、クレアHDの社外取締役と監査役は、弁護士や公認会計士に調査を依頼します。その調査の結果、クレアの株を巡る動きにインサイダー取引の可能性が高いという内容が報告されています。
オリオン1号投資有限責任組合で社長を務める岡本武之氏は元々ジールコスメティックスの社長と関係性があったため、そこが問題視されました。クレアの株価が上がったのは、ジールコスメティックスと契約をしてからで、6月から8月にかけて、オリオンなど2社は株式売買を頻繁に行っています。これらのことがインサイダーではないかと思われている部分です。
- 風説の流布もあった?
この調査ではインサイダーだけでなく風説の流布の可能性も指摘しています。クレア株式会社は、ジールコスメティックスだけでなく株式会社パースジャパンとも売買契約を結びました。ジールコスメティックスから仕入れたものをパースジャパンに販売してもらうためです。この契約が発表されて再び株価は高騰を見せますが、すぐには販売までに至らなかったことから、こうした行為が風説の流布ではないかと指摘されています。
岡本氏率いるセノーテキャピタルは、取締役候補の選出などの株主議案を提出しており、臨時株主総会を開催する運びになりました。クレア側は株主側が提案した議案の反対を求めており、議決権行使助言会社のInstitutional Shareholder Services Inc.「ISS 社」に至っては、クレア側の会社提案に賛成、取締役候補には反対推奨を出しています。要するに、株主提案には反対するのが望ましいという判断を示したのです。
ダチョウ抗体をめぐる岡本氏らの株式売買だけでなく、契約内容の履行が確認できないこと、売買契約を前後して行われた不可思議な株式売買などを見ても、中身を吟味しないで判断を下すのははっきり言えば危険です。中身を吟味して議決権を行使することが求められます。