配当割引モデルで2月下旬以降の株価の動きを説明すると

優利加さん
優利加さん
昨日の米国株式相場は高安まちまちとなった(DJIA +11.93円 @26,282円、NASDAQ -67.10 @9,616)。ドル円為替レートは109円台前半の前日比やや円安水準での動きだった。本日の日本株全般は上げる銘柄がの方がやや多かった。東証1部では、上昇銘柄数が1,154に対して、下落銘柄数は943となった。騰落レシオは138.53%。東証1部の売買代金は2兆4542億円。

TOPIX +9 @1,612
日経平均 +168円 @22,864円

3月19日以降これまで上昇トレンドが続き短期的な過熱感が高まっているため、前場は利食い売り優勢だったが、米国経済の再開期待が根強く米ダウ先物が上げ幅を拡大していたこともあり、日経平均は午後になると上昇して陽線で終えた。欧州中央銀行(ECB)が市場予想を上回る規模の追加金融を決定したことも株価を下支えした。

国内に目を転じると、政府が打ち出した補正予算案が予想以上に大規模となったことも株価を押し上げている。政府の支出はすなわち国内総需要の増加である。事業規模は第1次と第2次の合計で200兆円強である。一般会計の追加歳出額は57兆円となり、リーマンショック後の2009年に組まれた経済対策規模の約4倍である。大規模な金融緩和も継続している。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大は止まり新規感染者数は減少傾向にある。

今回の戻り相場で株価が上昇している理由を理論的に説明しておこう。株価の理論値を計算するモデルはいろいろあるが、古典的で一番分かりやすいモデルが配当割引モデル(DDM)である。このモデルによれば、遠い将来までのすべての配当を(1+投資家の要求収益率r)のn乗で割った現在価値の合計が理論株価となる。投資家の要求収益率はリスクフリーレート(=長期国債の利回り)に投資家が追加で欲しいリスクプレミアムを上乗せして決まる。このリスクプレミアムは相場の状況により拡大したり、縮小する。今回のコロナショックで投資家はリスクが拡大したと感じたから3月19日までリスクプレミアムも心の中で拡大して、分母が大きくなった。それと同時に配当が将来少なくなるのではないかと心配して分子の期待配当を心の中で小さくした。分子が小さくなり、分母が大きくなったので、その商(=理論株価)は小さくなった。しかし、株価が大幅に下げるとより安く買えるのだから期待収益率は高まる。すると今までは様子見だった投資家がこんなに高い利回りが期待できるならと買いたくなる。そこへ政府のなりふり構わぬ金融緩和政策と財政拡大政策が発動された。金融緩和政策と財政拡大政策により政府が総需要を拡大する姿勢を鮮明にしたことで投資家は要求収益率を下げた結果、DDMの分母が小さくなり、さらに株価急落過程で引き下げられた分子の期待配当を再び高めつつある。これによりDDMの分子が大きくなり、分母が小さくなったことで、その商(=理論株価)が高まった。この理論株価の上昇と歩調を合わせて実際の株価も高まってきた。どうだろう、理論的にはこのように説明できる。

日経平均の日足チャートを見ると、目先の上値は重そうで高値を更新できなかったが、陽線で終えており、まだ上に行こうとする勢いが感じられる。

33業種中25業種が上げた。上昇率トップ5は、空運(1位)、鉄鋼(2位)、海運(3位)、保険(4位)、銀行(5位)となった。

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