日本株が回復する条件が国内外で揃ってきた
「外需・グロース・新技術」に主役が交代
2016年10月14日
最近の原油高、円安基調を受けて、日本株はやや持ち直しつつある。ただ、閑散相場は相も変わらずで、大きく見れば、年初に急落したあとの膠着相場から抜け出せていない。個人投資家に勝機はあるか。みずほ証券投資情報部部長の倉持靖彦氏に有望セクターやテーマを聞いた。
日本株は来2017年夏まで緩やかに回復
株式市場は、10月いっぱいはモミ合いを続けて、12月末に日経平均のレンジで1万6000~1万8000円、17年3月末には1万6000~2万円を予想している。来年2017年の夏頃までは、緩やかな回復基調が続くとみている。
理由の1つは、米国など世界の景気、株式市場が比較的底堅く推移していること。米国は12月に利上げが見込まれているが、慎重なスタンスの継続から緩和状態が続くことに変わりはない。中国経済も不動産などバブルの懸念はあるが、2017年に最重要イベントの共産党大会が控えており、それに向けて景気を悪化させるような政策運営はしないだろう。新興国経済もおおむね改善基調にある。
また、日本の景気も、景気対策効果が出てくることや在庫調整が進んでいることなどから持ち直してくる見込みだ。企業業績は2016年度の上半期をボトムに、2017年1~3月期は増益になってくるだろう。来2017年度は、為替レート1ドル100円を前提に、経常利益で10%、純利益で12%の増益を予想している。1ドル100円の水準は理論的に見てもちょうどよく、これ以上の大幅な円高の可能性は限定的だろう。円高による減益効果も一巡する。
バリュエーションは予想PER16倍程度とすると、日経平均は1万8000円程度となる。16倍のPERは割安ではないが、金融緩和状態で他市場との比較でも割高ではない。
ただ、2017年の後半は一時的に調整局面に入る可能性がある。アノマリー(季節性など)や18、19年の米国景気を見極めようとする動きが出る可能性があるからだ。
物色の矛先がちょうど今、転換していると考えている。バリュー株からグロース株へ、内需株から外需株へ、ディフェンシブ株からシクリカル(景気敏感)株に、物色が移っていくだろう。世界全体で見て金融緩和政策の限界から、財政出動による景気対策が行われる状況になった。となると、金利に上昇圧力がかかり、インフラ投資や成長セクターにより注目が集まるだろう。
セクターでは、化学、機械、建設、電機、商社などを強気とみている。保険や鉄鋼も弱気から中立に見通しを引き上げた。
金利水準そのものは低く、債券投資での利回りが期待できないことから、引き続き債券代替投資先としてのニューソブリン株への関心は続くだろう。大型株で健全財務、安定配当のいわゆる優良株には底堅いニーズがある。押し目では必ず買いが入ってくる。
スマホからIoTやフィンテック、VRに主役交代
IoTやフィンテック、シェアリングエコノミー、PFIや港湾整備、新幹線などのインフラ関連、VRを軸としたゲーム、3次元NANDなどの半導体、分子標的薬などの個別化医療関連、人材派遣などの労働市場改革関連といったところに注目している。かつての牽引車だったスマートフォン関連は、市場が成熟し部材も含めて競争が激しくなっており、慎重に見ている。
外国人投資家は日本株をスルーしている。日銀によるETF購入の評判が芳しくない。日銀の買いが、株式市場の価格形成を歪めており、バリュエーションに基づいた投資ができなくなっていると言う。また、過去はガバナンス改革やROEの引き上げなどに期待して外国人は日本株を買ったが、いまだにその成果が明らかでない。構造改革や規制緩和が本当に進まないと、外国人の本格的な買いは入ってこないだろう。
現状は、インデックス投資で成果を挙げるのは難しい局面だ。業績、成長性を核に銘柄優先で取り組むべきだろう。成長性のあるセクターごとにバランスよく選んで、ある程度安くなったタイミングで投資する戦略がいいだろう。
東洋経済on line