再来“バイオ株”相場、「ノーベル賞」受賞期待で株価に火

再来“バイオ株”相場、「ノーベル賞」受賞期待で株価に火

そーせい <日足> 「株探」多機能チャートより
―秋のバイオ関連「スター株」「期待の株」を追う―

 主力銘柄への物色の矛先が継続するには東京市場は全般エネルギー不足。下値では日銀のETF購入というセーフティーネットは敷かれていても、為替や原油価格などを横目にリスク回避ムードがつきまとい、国内外の機関投資家には大型株の上値を買う主体の乏しさが浮き彫りとなっている。しかし、個別ベースでみると旺盛な物色意欲は決して失われていない。ハイボラティリティの中小型株の優位性が意識されるなかで、マザーズなど新興市場の牽引役であるバイオテクノロジー関連が再度、要注目場面にある。

●ノーベル賞の季節到来が起爆剤に

 秋はノーベル賞のシーズンでもある。自然科学3賞の受賞者が10月3日の医学生理学賞を皮切りに順次発表される。昨年は医学生理学賞、さらに物理学賞で日本人研究者が選ばれ、連日の受賞報道に日本列島は沸いたが、今年も医学生理学賞では免疫分野に強い日本人候補者が挙がっていることもあって、日本人研究者の3年連続の受賞に期待が高まっている。テーマ買いの舞台の中心でバイオ関連が躍る秋となりそうだ。

 既に前週末にバイオ関連は一斉高に買われていたが、週明け26日の東京市場でも悪地合いのなか買い優勢となる銘柄が少なくなかった。特に、前週末にストップ高を演じ、その余韻冷めやらぬなか連日の大幅高と気を吐いたのがシンバイオ製薬 [JQG]。同社はがん、血液、ペインマネジメントの3領域に特化して医薬品の開発・商業化を進めるバイオベンチャーで、開発費負担先行で業績は赤字が続いているが、将来への期待が大きい。ノーベル化学賞では同社のシニアアドバイザーである崇城大学DDS研究所・特任教授の前田浩氏の名前が挙がっており、これが物色人気を呼び込む格好となっている。

●小野薬、そーせいが拓いたバイオの花道

 また、がん免疫活用型治療薬といえば「オプジーボ」が収益成長を牽引する小野薬品工業 がシンボルストックだ。前週後半から動意づき、この日も3連騰と人気を集めた。同社株は6月以降オプジーボへの行き過ぎた期待の反動から調整局面入りし、8月8日には幅広い肺がん患者への治験に失敗したことで下げ加速となった経緯があるが、くしくも秋のノーベル賞シーズンに歩調を合わせるように、ここ底値離脱の動きを明示している。

 こうした個別銘柄の動きが、総花的な上げ潮ムードにつながるのはバイオ関連セクターの特徴でもある。多分にマネーゲーム的な要素も否定し得ないが、最近は黒字バイオベンチャーの出現が、大手製薬会社の創薬ニーズと相まって“現実買い路線”を引き出しており、人気が完全に離散することが少なくなっている。新薬不足の解消に腐心する世界のメガファーマは創薬ベンチャーに対し、事業提携や、あわよくばM&A含みでその技術を取り込むことに舵を切り始めており、合従連衡の思惑も底流している。

 その思惑の先導役となった出世頭といえば、創薬基盤技術を強みにメガファーマとの提携で収益を急拡大させているそーせいグループ [東証M]であることは論をまたない。昨年2月に買収した英国子会社ヘプタレス・セラピューティクス社を成長エンジンに株価も変貌を遂げた。製薬企業世界トップのノバルティス社が販売するCOPD治療薬「シーブリ」と喘息治療を加えた配合剤「ウルティブロ」のロイヤルティー収入のほか、ヘプタレス社と世界大手製薬会社アラガン社とのアルツハイマー治療薬などの開発・販売提携により期待が高まっている。

●iPS細胞分野で飛躍する企業群

 また、「バイオ関連でも以前のように値動きの良いものにつくという需給優先の流れから、実態を重視してテーマごとに選別買いの動きも意識されるようになった」(国内中堅証券)と指摘されている。

 そのなか、皮膚などの細胞に複数の遺伝子を組み込み様々な組織の元になる細胞を作り出すことを可能とするiPS細胞は、バイオ関連でも主役のテーマだ。昨年6月に東証マザーズに上場したヘリオス [東証M]はiPS細胞技術を使って再生医薬品の開発を進めており、理化学研究所から特許ライセンスを受け「加齢黄斑変性」の治療薬開発を進捗させる一方、急性脳梗塞などを対象とした新薬の研究開発やiPS細胞から作製した肝細胞を移植して肝臓を再生する新しい治療法実用化などにも取り組んでいる。このほか、iPS細胞関連としては研究試薬を手掛けるリプロセル [JQG]や、前臨床試験受託トップの新日本科学 、富士フイルムホールディングス の子会社で業界に先駆して再生医療製品を開発販売するジャパン・ティッシュ・エンジニアリング [JQG]などが挙げられる。再生細胞薬の開発を手掛け、慢性期の脳梗塞治療法の確立に注力するサンバイオ [東証M]にも市場の熱視線が注がれている。

●特殊ペプチドでも広がるバイオ関連市場

 一方、2個以上結合した特殊アミノ酸である特殊ペプチド、これを活用した創薬ベンチャーで筆頭に掲げられるのがペプチドリーム だ。そーせいと時価総額でしのぎを削るバイオ業界のツートップ銘柄でもある。ペプチド創薬分野で世界トップクラスに位置し、創薬技術そのものを事業化させているのが特徴で、創薬初期から収入を得られる強みを持っている。国内外のメガファーマと共同開発契約が相次ぎ、そーせいとともに黒字バイオベンチャー代表としての存在感は不動だ。

 ペプチドはアミノ酸をつなげたもので用途は広いが、医薬品にするためには細胞膜を透過しにくいなどの課題をクリアする必要がある。ペプチドリームは独自技術でこの問題点を解消、医薬品候補化することに成功しており、新薬開発のカギを握る技術となっている。

 このほかペプチド関連では、ペプチドリームと標的タンパク質に対し特殊環状ペプチドを創製する共同研究契約を結んでいるJCRファーマ や、がんペプチドワクチン開発を進捗させるグリーンペプタイド [東証M]などもマークされている。

●核酸医薬関連も株価変貌の宝庫に

 バイオベンチャーでは核酸医薬分野も今後注目の的となりそうだ。タンパク質の設計図であるDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)を構成する4種の塩基を組み合わせた核酸分子を用いる薬剤であり、遺伝子に直接作用して働きを抑制し、疾患の要因となるタンパク質の部位を切り取ったり、合成を阻害したりする。ターゲットとなるタンパク質が見つからない難治性疾患でも原因となるDNAやRNAに直接働きかけ活路を開く。

 このカテゴリーではリボミック [東証M]がマークされている。東大発のバイオベンチャーでリボ核酸(RNA)を活用した分子標的薬(アプタマー医薬)開発で高実績を有する。直近では筆頭株主の大塚製薬(大塚ホールディングス )と共同で研究開発したがん治療に関する技術が、米国で特許査定を受けたと発表し、物色資金を一気に引き込んだ。

 このほか、薬物搬送システムで高い技術力を持ち、ミセル化ナノ粒子製剤による副作用の少ない抗がん剤開発を進めているナノキャリア [東証M]も折に触れ脚光を浴びる。核酸医薬のデリバリーに関する物質特許出願では8月に欧州特許庁から特許査定を受領しており、これに伴い主要市場である日米欧を含めた権利確保を可能としている。同様に核酸医薬の薬物搬送システムで活躍が見込まれているのが、キリンホールディングス 傘下でバイオケミカル分野を深耕する協和発酵キリン だ。

 日本新薬 はアンチセンス核酸医薬品であるDMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)治療剤の開発に傾注、肝硬変の治療薬に使う核酸医薬品の開発を進捗させる日東電工 なども関連有力株に挙げられる。

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