シルバーウィーク中の読み物として「波乗り投資法」の紹介を予定していましたが、予定した部分を後回しにして、急きょ刺激的なタイトルとなりました。
今の日本の市場は、川向こうの火事がだんだん大きくなって、浮足立ってきたという感じです。初めは、「火事と喧嘩は大きいほうが面白い」と思っていたのが、火元が絶対燃えないと思っていたところだけに、騒ぎが大きくなってきました。
でも、タンス預金を引き出し、どこへ逃げようとするのでしょうか。ゆくところがあるというのでしょうか。こんなときこそ政府を信じて日本市場を守ることです。火の元から一番遠い国が、どうして一番影響を受けるのでしょうか。
原因は隣の国です。中国は政府の発表だけ見ると、世界一の経済大国です(と思っているのでしょう)。でも中身は全く分かりません。世界一の軍事大国になったことだけは、テレビで見せてくれましたが、それ以外の指標はほとんど信頼されていません。
かっての日本のように、バブルが崩壊し構造的な不況となっていることは想像されますが、その割には株価は下がりません。疑心暗鬼だけが広がってゆき、世界のマネーはどんどん中国から逃げ出しています。
そのマネーと不安のヘッジ先が、東洋にあって規模が大きい日本市場に流れ込んだのです。
「世界で一番開かれた市場」がいいのか、中国のように二つ市場を作って、その一つを外国人に開放するのがいいのか、真剣に考えなくてはならないでしょう。このまま日本市場が外国人のマネーゲームに荒らされると、過去何回かの暴落のように、株価の下落が経済の崩壊につながり、ふたたび失われた20年に逆戻りします。
対策は一つしかありません。日本勢が、日本株の価値が割安であることを理解し、買い支えるのです。日銀、郵貯、年金基金が先頭に立つことです。
日本の個人資産に占める株式割合が、先進国中最低にもかかわらず、富裕層の割合は世界一です。この不均衡を解消するには、個人資産の受け皿となっている銀行、生保、タンスから資金を株に移すことです。
今の日本の経済を支えているのは株価だけです。輸出も、国内消費も、投資も、全部不況への道を示唆しています。株価までが失速すれば、いよいよ不況入りです。
「老後の豊かな生活を株式で」と考えて、これから株式投資を始めようとする若い人には投資の機会がなくなり、市場の繁栄で年金を補おうとしている退職後の世代からは、夢を奪うことになります。
今日は、配当付き最終日で、売り玉の整理日に当たります。空売り筋も1日超すだけで、100円分の配当金を支払わなくてはなりません。国内勢もこの機会を狙っていたかもしれません。
昨日、安倍総理も、戦後70年続いた経済構造から脱却し、新しい経済への意向を宣言したのです。今回の大きな下げが、「賭場」の喧騒に背を向けて、新しい市場を考えるいい機会になればと願っています。
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PERから配当利回りへ(これが本来のヘッドラインです)。
8月中旬、株価がまだ20,000円を上回っていたときに、CNBCのゲスト出演者が、その著書「日経平均30,000円説」についての説明をしていました。
正直なところ、「またまた出現か?」の思いでしたが、私もそのころ、アベノミクス相場の出口を考えていましたので、著者の思いを聞く機会に恵まれたと思い、最後まで聞いていました。
著者は違いますが、同様な本はすでに年初、「オリンピックまでに40,000円説」で出版されています。今回はそれよりは低いものとはいえ、時期についてはアベノミクス相場の終着点をいっているようです。
根拠は、1970年ころから昭和バブルを経て、リーマンショックの下降トレンドで大底を打った株価の長期チャートが、どんぶり状に回復し、その先が30,000円に達するというチャート理論と、日本では低いPBRが、欧米並みに2倍までになるというファンダメンタル面での組み合わせのようでした。
株価は、不幸にもこの人の出演前後から調整に入り、今では年内20,000円も無理だというような声が充満しています。これでは、本の売れ行きもいまいちのようで、最近では町の本屋さんではあまり見かけなくなってしまいました。
でも、私としては前回の本より今回の30,000円説のほうが、理論的には筋が通っているような気がします。というのも、ファンダメンタルとして、PBRを裏付けに使っているからです。
ご存知のように、現在の株価の尺度として世界中で普遍的に用いられているのは、
株価=EPS×PER
で、PERの14から17倍程度を、ファンダメンタルから見たバリュエーションにしています。
これで、今季のEPSを1,250円とすると、株価の範囲は、17,500円から21,50円程度が、バリュエーションの範囲になります。EPSをもう少し高めに見ても、23,000円程度が上限です。
この壁を破るには、株価の物差しを替えなくてはなりません。この著者はその尺度として、PBRを持ち出したのです。
尺度を変えるには、投資環境の変化が必要です。株価は、売り手と買い手がいて、初めて成立します。現在の尺度で、23,000円の上限を突き破るには、23,000円を買う人がいないと株価は成立しません。30,000円も同じことです。30,000円を買う人がいないと30,000円にはならないのです。
私は、投資環境を変えるには、PBRより配当利回りだと考えています。株価のバリュエーションが、PERで17倍に達しても、なお途上国を含めて株式以外に有利な投資手段がなくなったときに、新しいパラダイムへの移行が始まります。
その場合、なによりも買い手の意識の変化が重要になります。現在の買い手としては外国人ファンドですが、彼らの意識が、先進国にある金融商品の中で、株式が他のものより有利だと考えるようになって、初めて可能になります。
その時期がいつになるかは分かりませんが、シフト先は配当利回りであることは間違いありません。できれば「アベノミクス相場が終わらないうち」を期待しますが、日本で最大の買い手である富裕層が老齢化している現状から、パラダイムシフトは日本から起こることはないと思っています。
株価水準がPERから配当利回りで説明するようになれば、その壁は、現在日経平均で1.5%程度の配当利回りが、1.0%水準ではないでしょうか。その時の株価は、25,000円程度というのが私の考えです。