ユリッチさんのブログ

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株式いちば

Ecbae23d2  

母とタクシーに乗ったときの話です。

母が、シートの上の運転手名を、声を出して読み上げました。
「津軽弁蔵(仮名)さん。津軽弁蔵さんて仰有るんですか」
すると弁蔵、冷たい口調で言葉を返してよこしました。
「そうですよ。それが何か?」
私はムッとしました。それが何かはないでしょうと思いました。すかさず母も言いました。
「ここに貼り出してあるから。お名前を覚えておこうと思って」

今度また利用させてもらうつもりで、母はよくこうして運転手さんに話しかけるのです。

ところが弁蔵、ムスッとしたまま、
「わたしが津軽弁蔵だからそこに貼ってあるんですよ。別人であるはずないでしょう」

なんて横柄な態度でしょう。こんな人の車にはもう1秒でも乗っていたくないと思い、途中でおろしてもらおうとしたら母が、
「この写真ずいぶん痩せて撮れてるから違う人かと思った。今は、ぶんとしてるものね」

ぶん、というのは津軽弁で、太って丸々としているという意味です。すると運転手さん、急に相好を崩して、
「あぁ、それはそうかも。最近やたらマンマめくて(ご飯美味しくて)食い過ぎてるんだぁ。カガァからは豚でねかって叱られちゃってねわっはっは」

それからはすっかり打ち解けてしまった母と津軽ぶん蔵さん。

降りるときには私に、
「いちばでしっかり、がんばりへ~~」

母が私を、株のいちばで働いていると余計なことを。


もう二度と、津軽ぶん蔵さんのタクシーには乗らないようにしようと決意して、ハイブリットカーを見送りました。食欲の秋の津軽の空は、ぶんとした雲をいっぱい抱えて、今にもベソをかきそうでした。
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