平成27年5月15日
証券取引等監視委員会
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1.勧告の内容
証券取引等監視委員会がカブドットコム証券株式会社(東京都千代田区、代表執行役社長 齋藤 正勝(さいとう まさかつ)、資本金71.96億円、常勤役職員107名、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
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2.事実関係
○システム管理が十分でない状況
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(1)システム障害の管理が極めて不適切な状況
カブドットコム証券株式会社(以下「当社」という。)のシステム障害の管理の状況を検証したところ、
ア発生日時や事象の異なる複数のシステム障害が1件にまとめられ、実際に発生したシステム障害件数よりも大幅に少ない件数が執行役等に報告されており、執行役等もこれを容認していること
イ顧客影響数について必要な確認が行われていないこと
ウシステム障害の状況等の確認、原因究明、再発防止策等の検討及び執行役等への報告が、社内規程で定められた期限よりも大幅に遅れて行われていること
など、システム障害の件数、顧客影響数及び原因分析や、改善・再発防止などの実施状況を正確に把握できない状況となっている。
さらに、
エ金融庁長官に報告されるべき多くのシステム障害が報告されていないこと
オシステム障害が発生し顧客に影響を及ぼしているにもかかわらず、適時に顧客に告知していない事例が認められること
から、当社のシステム障害の管理は極めて不適切な状況にあるものと認められた。
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(2)システム開発の管理の不備
当社は、
アシステム開発における品質管理を定めたガイドラインにおいて、基本的なテスト項目に漏れがあることから、開発工程におけるプログラム不具合等をテストで検出できておらず、品質管理が不十分なものとなっており、開発後に顧客に影響を及ぼす多数のシステム障害が発生していること
イシステム開発の進捗管理が社内規程で定められたとおりに実施されておらず、また、執行役等には、システム開発の作業内容の報告しか行われず、進捗や遅延の状況を正しく管理、把握できるものとなっていないこと
から、当社のシステム開発の管理には不備が認められた。
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(3)内部監査が機能していない状況
システムの実務運営上の問題を検出するだけの知識を有する監査要員が不足しており、また、実際にはシステム開発における品質管理や進捗管理に係る検証を実施していないにもかかわらず、これらについて概ね問題ないことを確認した旨を取締役会等に報告していた。
当社における上記の業務運営の状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第14号に掲げる「金融商品取引業等に係る電子情報処理組織の管理が十分でないと認められる状況」に該当するものと認められる。
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(参考条文)
○金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)
(適合性の原則等)
第四十条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。
一 (略)
二 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。
○金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)
(業務の運営の状況が公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるもの)
第百二十三条 法第四十条第二号に規定する内閣府令で定める状況は、次に掲げる状況とする。
一~十三の二 (略)
十四 金融商品取引業等に係る電子情報処理組織の管理が十分でないと認められる状況
(以下、略)