時価総額重視の光と影

yuhsanさん
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会社の規模を表わす指標としては、資本金が一般的です。資本金が100億円以上は大企業、10~100億円中規模企業、10億円以下は小企業というように。額面も50円が普通でしたから、発行株数も資本金を50で割れば、簡単に算出できました。


ところが2000年ころから、無額面株券が一般化し、株券も電子化されるようになって、会社の規模は、会社の買収価格(時価総額)で決まるようになってきました。


時価総額は、時価総額=株価×発行済み株式数 で表わされ、株価によって日々変わる時価総額は、日経などから公表されています。


それによると、上位から100番目くらいが、時価総額1兆円前後で、日本の大企業とされるようです。昨年10月16日に新規上場したリクルートの時価総額は、1兆9,000億円で、東芝やソニー並みになります。ゲーム関連からも、1兆円企業としてミクシィ、コロプラ、ガンホーの名前があがっています。


このように、時価総額が会社の規模を表わすようになると、企業経営者としても時価総額の向上をひとつの目標にするようになります。時価総額を数式で表わすと、
(1)時価総額=株価×発行済み株式数
(2)時価総額=総利益×PER
となって、二つの式で表わされます。


問題はここからです。


(1)の式から、時価総額を増やすためには、「発行済み株式数を増やす」か「株価を上げる」になります。最近では時価発行でも株数を増やすことは、既存の株主の利益を薄めるということで嫌われるようになり、発行済み株式数の増加で時価総額をあげる企業は少なくなってきました。


株価は1株利益×PERとなりますので、1株利益を上げることができれば、株価を上げることが可能です。1株利益は、利益総額が変わらないでも、発行済み株式数が減少すれば上げることができます。とはいっても、1株利益が上がった分だけ、発行済み株式数が減っているので、時価総額は変わらないという結果になります。


その結果が、(2)の総利益にPERを掛けたものになります。


この式からは、PERが変わらなければ、総利益が増えない限り株価が上がらないはずですが、現実には、自社株買いなどで発行済み株式数が減少すると、株価は上がるのです。


これが最近における自社株買いのインセンティブになっています。これを繰り返せば、利益を増やさなくても、時価総額を上げてゆくことが可能になります。まさに、時価総額向上を目指す経営者にとっては、魔法の杖となります。ライブドアと反対のやり方で、見せかけの時価総額を増やした結果は……、どうなるかよく分かりません。無限には増やせないでしょうから、どこかで壁にぶつかってしまいます。


この方法は、日本ばかりではありません。世界中で金余り現象が顕著で、企業はだぶついた資金のやり場に困っています。利益が増えると、新しい投資が起こり増資をするか、株式分割をして新しい資金を呼び込むのですが、企業はひたすら発行済み株数を減らす方向に動いています。


かくして、EPSは想定以上に増大し、PERが変わらなくても株価を押し上げてしまします。どうやら日本も例外ではないようです。


15年3月期の企業業績は、リーマンショック直前を超えると想定されていますが、日経225銘柄の一株利益は、とっくに20%ほど上になっています。株価は、やっと07年の高値を超えたところですが、別に大騒ぎをするほどの水準ではないのです。


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長らくお休みをしていましたが、また少しの間お邪魔します。


電子書籍は、更新が比較的容易にできますので、その間の日記を電子書籍「波乗り投資法2015年版」の第四部に更新してあります。興味のある方はご覧ください。






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