「チャイナ・インパクト」で韓国経済は危険水域へ
それでも「慰安婦」「領土」広報予算は聖域? (産経新聞)
韓国で深刻な景気後退への危機感が強まっている。
中国の高成長によって造船や石油化学などの主要産業で潤った韓国だが、中国の成長鈍化で、韓国経済が逆サイクルに回り始めたからだ。
世界トップクラスの造船会社、現代重工業は創立以来、最悪の業績に陥り、大規模なリストラに着手。韓国サムスン電子はスマートフォン市場の競争激化による不振から抜け出せずにいる。
一方、今年度の政府予算には思い切った景気対策が不可欠なはずだが、慰安婦問題や韓国が不法占拠を続けている島根県・竹島(韓国名・独島)などをめぐり、韓国の主張を海外に広める広報予算は1・4倍にする方針で、相変わらずの増強路線。韓国経済は自力で這い上がれるのか-。
ついに「ゼロ成長時代」か!?
韓国経済のゼロ%台成長は1年を迎えた。
韓国銀行が明らかにした韓国の昨年7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比0・9%増となり、一昨年10~12月期以来、1%に満たない低成長が続いていることが分かった。
同4~6月期は、旅客船セウォル号の沈没事故を背景にした消費の萎縮が理由にあげられたが、ここまで長く低迷するからには、韓国経済が構造的な壁にあたっている可能性が高い。
「スマートフォンがアップルと中国の小米科技(シャオミ)のはさみ撃ちを受け、中国への輸出増加傾向も弱まり、海外で生産して加工貿易の形態で中国に向かう半導体・液晶表示装置などの量も減った」。中央日報によると、韓銀の経済統計局長はこう分析している。
韓国サムスン電子は本業のもうけを示す営業利益は4四半期連続で前年同期を下回る不振ぶりだが、苦境にある企業は、サムスンだけではない。
「役員全員、辞職願出せ」の号令
現代重工業が昨年10月16日に発表した人事では、役員職の3分1が消えたと、中央日報が伝えた。
日曜日の同月12日に本部長会議を開いた現代重工業は、役員全員に辞職願を提出させる方針を確認したばかりだが、わずか4日後で大胆な人事に踏み切った。262の役員職のうち、81を無くした。先行きへの危機感にほかならない。
聯合ニュースによると、9月の船舶受注量で韓国は、日本の造船業界に押され、3位に転落した。市況分析の英クラークソンのデータでは、中国が92万2800CGT=標準貨物船換算トン数(市場シェア45・3%)、次いで日本が55万1850CGT(同27・1%)につけ、韓国は42万1528CGT(準貨物船換算トン数)でシェア20・7%だった。
韓国が月間ベースで日本に抜かれたのは4月と6月に続き今年に入って3回目という。日本は、韓国や中国との受注競争で劣勢だったが、円安を背景に韓国や中国との船の価格差をつめてきていると分析した。
中国の恩恵は減り、逆風に
「『チャイナインパクト』(マイナスの意味での中国の影響)がある」
韓国の大企業の業績悪化の一因について、日本総研は昨年10月に公表したリポートでこう指摘した。
造船業界でいえば、中国の成長が鈍化してきたことで、それまで旺盛だった資源需要が急速にしぼんで、荷動きが減速。中国景気の恩恵を受けてきた造船や海運には逆風が吹き始めた。
現代重工業は、リーマンショック後で落ち込んだ造船受注を取り戻そうとしたが、安値受注(船舶価格下落)に海洋プラントの損失が重なり、利益が出にくくなった事情がある。
中国からは、生産過剰になった鉄鋼や石油化学などの素材が世界中にあふれ出して市況が悪化。サムスンが得意としてきたスマートフォンも、中国の小米科技(シャオミ)、聯想(レノボ)などの低価格品の台頭と米アップルの人気から、苦戦を強いられいる。製品戦略を含めた構造的な問題に直面しているのだ。
経済崖っぷちでも外交部予算は初の2兆ウォン台
韓国経済を牽引する企業が弱る中、政府が打ち出す景気対策には大きな期待がかかる。
韓国政府が昨年9月に発表した今年予算は、前年比5・7%増の376兆ウォン(約38兆5千億円)。毎日経済新聞よると、金融危機以降で増加率は最大で、「財政の積極的役割を通じて景気をいかすことが最も重要な目標」と位置付けられ、「創造経済予算」と呼ばれる枠には、17・1%増の8兆3千億ウォンを配分するという。
限られた財源の中で、景気に軸足を置いたメリハリをきかせた配分が重要になるが、そうはいかない予算もあるようだ。
聯合ニュースによると、韓国外交部の予算案は、2・9%増え、2兆495億ウォンと初めて2兆ウォンの大台に。なかでも「公共外交」(広報文化外交)関連予算は131億ウォンで、14年より41億ウォンも増加。13年と比べれば2倍以上の増額になる。
慰安婦や竹島問題について、「外交課題に関する理解を高めるのが狙い」としている。
さらに「独島が韓国固有の領土であることをアピールし、東海の『日本海』表記などに対応する」ための領土主権守護事業には今年と同水準の48億ウォンがあてられ、韓国の国際協力団(KOICA)への政府開発援助(ODA)予算は600億ウォン増額するという。
たとえ、韓国経済が崖っぷちにあり、企業が骨身を削るリストラをすることなっても、日本との外交にかかわる問題については、引くに引けない国のお国柄が予算案にもうかがえる。