車椅子の中で前のめりになり、アルマジロになっていた父。
声にならない。言葉にならない。気持ちがまとまらない。沈黙するしかない。
『沈黙のひと』より
両親の離婚後、疎遠になっていた父がパーキンソン病を発症。
主人公の衿子(えりこ)は今までの時間を埋め合わせるかのように、
真剣に父に向かい始める。
父を取り巻く7人のおんなたち。
衿子、衿子の母、父の後妻と二人の異母妹、仙台の女性、短歌仲間の女性。
それぞれが抱く、愛そして憎しみ。
体の自由がほとんど利かなくなった父に、
認知症を患い、施設に入所した母の近況を伝える。
母が肌身離さず身に着けていたアメジストの指輪の話に及ぶと、
父の顔に変化が起こる。
学生の頃、小池真理子さんのエッセイを愛読していました。
私はミステリーや小説はほとんど読まないのですが、
『沈黙のひと』はちょっと読んでみたくなりました
介護や死については、まだまだ私には早いテーマだと思っていましたが、
本を読んで感情を揺すぶられてしまったのは、子供のとき以来です
小池真理子さんの父親の死後、
老人ホームでadult videoやらなんやらいっぱい出てきたとの事なので、
ほぼ実体験に基づく話みたいです
「手足の自由を奪われ、話すことさえできなくなっていた父を私は不憫に感じていたのですが、
性 的な欲望を持ち続ける力が残されていたのが嬉しかった。
最後まで人としての尊厳を失わずに生き抜いたことに感動を覚えました。」
『婦人公論 2014年8月22日号より』
やはり、小池真理子さんって、いいオンナだな~、と思います
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小池真理子
1952年10月28日生まれ。
成蹊大学文学部英米文学科卒業。
1978年 『知的悪女のすすめ』
1989年 『妻の女友達』 日本推理作家協会賞受賞
1989年 『プワゾンの匂う女』 日本推理作家協会賞受賞
1996年 『恋』 直木賞受賞
1998年 『欲望』 島清恋愛文学賞受賞
2013年 『沈黙のひと』 吉川英治文学賞受賞
など