歯は白い方が美しいというのは現代の考え方ですが、奈良時代(弥生時代とも)から明治初めまで、日本では歯が黒い方が美しいという価値観があったようです。
白い肌、黒髪、黒い眉、そしてお歯黒というわけですが、江戸時代には既婚女性の証でした。
お歯黒はただ黒いものを塗っていたのではないようで、焼いた古釘とお茶などから作られる鉄漿(かね)と、ふしの木の樹液から作られる五倍子粉(ふしこ)を使います。
何度も繰り返して塗ることで、歯の表面のエナメル質に浸透し色素が沈着していったので、磨いてもすぐに落ちるものではありません。
お歯黒の習慣は外国人から見ると奇妙なものなのですが、ペリー提督は気味悪がったと言われ、野蛮なイメージがあったためか、明治に禁止令が出されこの習慣は消えました。
ところでお歯黒には見た目の効果だけではなく、虫歯予防の効果もあったようです。歯磨き粉のアパタイトはお歯黒を参考に開発されたといいます。
