女は、上野公園にいた。西郷の銅像の前から、不忍池の方に、歩き出した。夕方だった。どんぐりが落ちていた。数日前は、子供がドングリを拾っていた。3人の子供が、はしゃぎながら拾っていた。子供は正直である。心を隠さない。嬉しくて、夢中で拾っているのである。それを思い浮かべながら、ゆっくりと歩いている。落ちているドングリの幾つかは、踏みつぶされて割れている。その間をゆっくりと歩いていく。
池の傍に来た。弁財天の小さな堂が池の中程にある。すこし、霧雨になる。女は持っていた傘を差す。うす暗い女の顔が更に暗く見える。女は考えているのか、無心なのか、分からなかった。女の脳裏では、雑念と歩く前の道が交互に出て来る。少し歩くと池が終わり、その先の細い道から根津神社の方になる。暗さが増してくる。街灯がポツン、ポツンと点きだした。
やがて女の姿は見えなくなった。不忍の池の上辺には、蓮の葉が幾つも、幾つも浮かんでいた。霧雨は、しきりに降りだした。暗くなる。
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