昔から資産三分法というのがあります。資産を現金、不動産、株式に三分割し、それぞれの長所を組み合わせて、予想される変化に備えるというものです。
今日では金融商品として、外国為替、外国債券、国債、金取引、穀物・原油などの商品相場、アパートマンション経営、社債、定期預金……、思いつくままあげてもこれだけあります。利殖雑誌、講演会などでは、これらを組み合わせた上で、時期をずらすのが、もっとも望ましいとしています。代表的なものとして、国内と外国の株式、国内と外国の債券の組み合わせなどです。
しかしどうでしょう。2008年に起こったリーマンショックでは、ほとんどすべての金融商品が、同じような暴落に見舞われました。リスク分散といっても、その限界が露呈されたのです。これは、急速に拡大したヘッジファンドなどが、有利な金融商品を求めて、世界中に展開していることが原因になっています。結果として、アメリカで起こった住宅債権の暴落が、あっという間に世界中に連鎖してしまったのです。
となれば、いくら利回りがいいからといって、政治も経済も不安定な国に投資し、為替リスクまで背負い込んで、リスクに見合うリターンが得られるでしょうか。外国為替や商品市場は、レバレッジを掛けることで、短期間に大きな儲けが期待できる市場ですが、利益も大きいかわりに損失も大きいギャンブルです。
金は実物資産として、換金性もありインフレにもっとも強いとされてきましたが、ETFにより金融商品となったために、市況の変動を強く受けるようになってしまいました。このように考えてゆくと、20年後の豊かな生活を目指して、これから投資を始めようとする世代の人にとって、なにが最善なのか……、方法はそんなに多くはありません。
投資した資金を増やすことのできる投資手段はたくさんあります。その中で資産を売却しないで、配当がもらえるのは、株と不動産以外にはそうありません。
ただ、不動産投資は、人口の減少と供給の増加から、アパートには空室が目立ち、家賃も値下がりしています。これからインフレになれば、土地の値段は上がるかもしれませんが、地域間の格差は拡大するでしょう。換金性にも問題があり、投入した資本が減少するリスクがついてまわります。預金や国債にも利息がつくという点では同じかもしれませんが、預金利息で生活するのは当面考えられません。
過去20年間の運用から見ると、株式投資は他の手段より劣っているように見えます。ただ、配当金を含めた運用成績から見れば、株式投資でも銀行預金並みの実績があります。株の場合には換金性が高く、所持コストもかからない上に、税制や景気刺激などで政府が関わってきます。
さらにあげれば、経済の発展とともに企業価値が増え株主還元は増加する、企業情報のガバナンスが向上し信頼性がある、経済の波を肌で感じることができる、投資主体が年金を始め個人まで広く厚みがある、景気と国力の指標になっている、株を担保に借金ができる、カントリーリスクがなく為替の変動を受けない……、あげればきりがありません。
今後20年間の経済を展望すると、インフレと国際関係が強く関係してくるものと思われます。デフレ解消のため、現在の超緩和的な経済運営は続き、経済は緩やかながら回復基調を維持し、企業の成長の果実としての株主還元は増大してゆくでしょう。
日本ほど安全で、政情が安定している国は、アメリカ、イギリス、ドイツ、北欧……、それほど多くはありません。政治が経済を作り、経済が株価をあげるパターンがようやく定着してきました。株価の安定が政治の安定なのです。安倍政権も黒田日銀総裁も、このことはよくご存知のはずです。
それでは、政治は誰が動かすのでしょうか。それは、われわれ日本人です。いくらがんばっても、アメリカの政治をわれわれ日本人で動かすことはできません。政治を動かすことができれば、経済は発展し、株価も上がるのです。子供にも孫にもこの国に留まって、豊かさを味わってほしいのです。
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著者には、株式投資に40年にわたる知見があります。一番いいときと、悪いときを経験しています。残念ながら株式以外では、それだけの知識と経験がありません。理解できないものを勧めるわけにはゆきません。
「ちょっと、ちょっと、待った!待った!」突然、天からの声です。
「お前はいいことばかり並べているが、外国為替で何億も稼いだ主婦だっているんだぞ。もっと、いいのがあるじゃないか」
「お言葉ですが……、ギャンブルで儲けた話は、めずらしいから話題になるのですよ。株で億万長者になった話は多すぎて、ニュースにならないだけです」
もちろん、株式投資だってリスクはあります。でも、20年後に豊かな生活を送れるのは、株式投資が一番です。ただ、投資に使う資金は別会計にして、それがなくなったら、きっぱりと諦めることです。最悪の事態を想定してリスクを取ってゆけば、少なくとも株でスッテンテンになることはありません。