高校時代の数学を思い出してみましょう。関数とは、ある変数に依存して決まる値で、一般にY=ƒ(X)で表されます。この場合、変数Xが決まるとYが確定されます。この数式は、時間と株価との関係を実によく表しています。
たとえば、2014年1月6日の株価が知りたいときには、変数Xに1月6日と入れると、当日の株価16,164円が表示されます。同様に、東芝の株価も時間を投入すれば株価が確定します。ただ、この関係が成り立つのは過去だけで、未来については反応してくれません。未来の株価は、変数は時間としても、それを構成する要素が、AからZまで無数にあるからだと思われます。
この関係は、チャートを見れば、一層明確になります。一般にチャートは、縦軸に株価、横軸に時間で表されますが、チャートが明確に記されるのは、過去から現在までで、未来については、チャートから類推した線かグラフでしか表わすことができません。
とはいっても、未来の株価がまったく分からないわけではなく、チャートからは過去の株価の動きや、習性あるいは季節性といった要素を、総合的に判断して将来の株価を予測しようとしています。先にあげた関数式からも、無限にあると思われる変数から、特に株価に影響のある要素を選んで、将来の株価を予測することは可能です。
でも、予測はあくまで予測です。未来の株価が確実に分かってしまっては、株価はその値段に張りついてしまい、買い手も売り手もいない市場となってしまいます。これでは、物の値段が市場での需給によって決まる市場原理が成り立たなくなり、証券市場も証券会社もその存在基盤をなくしてしまいます。やはり将来の株価は、神の見えざる手によって成り立つと考えたほうがよさそうです。
誰でも明日のことは分かりませんが、まったくの闇夜ではありません。分からないまでも、株価を決める要素を分析することで、株価の位置と方向は、かなりの確度で推測はできるのです。先の関数式でも、1年後の株価にもっとも影響度の高いものを拾い出すと、そのときの政治情勢、社会情勢、企業業績、世界の株価、金融情勢などがあげられます。
政治、社会、金融情勢、世界の株価などは、大きく変化しないとみると、株価に与える影響度の最大の要素は、日本企業の業績と見ることもできます。企業業績は、そのときの経済、社会、国際情勢などの影響を受ける上に、指数化が容易なために説得力もあります。
ただ、株価は一方的に上昇するわけではありません。経済にも波があるように、企業業績にも停滞をする時期があります。売り手と買い手がいて始めて成り立つ株価にしても、株価が変動することで市場価格が成立し、一物一価の原則が成立するのです。この変動する現象こそが、市場の機能といえます。
株価の将来は単純には決まりませんが、「株価は変動する」ことだけは、市場原理に根付いているため、避けることのできない現象といえます。明日の相場は、分からないにしろ、上下に動くことだけは確実です。これが短期間でも、長期にわたっても、波を作って動いていることだけは間違いなく、過去の動きを見るかぎり、上下の波は4~5年の周期で繰り返されています。
この波を理解し利用できれば、停滞期から始まって上昇、天井、下落、と続く相場の波の中で、停滞期(底値期)に株を増やし、天井期に株を売却すれば、一相場の終了時期には、出発点に比べて資産を増やすことができます。さらにそのときに相場が求めている銘柄を中心として、持ち株を組めば、漫然と株を持ち続けているよりは、早いペースで資産の増加が計れます。
このように、相場の波動を捕らえることで資産の増加を計れるならば、株の成果は、相場をいくつ乗り越えるか、で決まります。株式投資の成果は、時間によって決まるのです。時間は天与の財産ですが、年とともに減少してゆきます。時間を多く持つ世代ほど、資産を増やす機会に恵まれているといえます。
残念ながら、生涯時間が少なくなっている世代からの株式投資は、増やすことより、遊ぶことに重点をおいたほうがよさそうです。