先週の動きを見ていると、昨年の動きがうそのようです。
安倍政権が誕生して、そろそろ2年になります。その間、2回の下げを交えて、ほぼ右肩上がりの相場が展開してきました。上昇2年、天井1年、下落1年という過去の相場の習性からすると、そろそろ天井期に入ってもおかしくない相場つきです。
昨年来の上昇を牽引したのが外国人で、この間売りに回った日本人は、外国人にいいところを持っていかれた上に、現在でも相場が割高だとして買いを見送っています。外国人は、今年に入ってからは売りに転じ、すでに2兆円ほど売っています。本国の金融引き締めで、海外資産を引き上げに掛かっているのが背景にあり、この流れは当分続くと見ています。
相場も外国人売りで、年初から15%ほど下げましたが、以後一進一退を繰り返しています。需給を見る限り買い向かっているのは、国内の年金、日銀、金融機関などで、主として政府系の資金、PKO資金が中心です。
企業業績を見る限りでは、現在の相場はまだ5合目付近にあるというのが私の見解で、すでに先週のこの欄でご紹介した通りです。とはいっても、先週の動きを見ると、市場関係者の中にも、これからの日本経済の方向性に迷いが出てきたようにも見えます。
週初は、企業決算発表を控えた見送りと誰もが思っていたのですが、SQ明けの金曜日に、ヘッジファンドを中心とする外国人売りで500円近く下げました。久しぶりの大幅な下げで市場には動揺が広がりました。90年バブルやリーマンショック時の外国人売りが株価の暴落に繋がり、その後の大不況の原因になったことを考えると、今回の外国人売りの背景を無視はできません。
新聞報道によると、先週の下げを主導したのはヘッジファンドで、イラクにおけるアメリカ軍の空爆開始発表と時間が重なります。ただ、背景にあるのが、マクロとミクロこの乖離を狙ったものであるとすると、あながち的外れだと一蹴できません。
というのも、今年の株価の動きから、物価上昇を始めとする経済指標が軒並み停滞し、日銀総裁の談話にもがけりが見えるようになってきました。日本経済は、政府日銀が考えているより停滞しているのです。
一方、今日の日経一面によると、4~6月期の上場企業業績は、消費増税にもかかわらず、海外の収益好調で増益だということです。日本企業がいくら海外で稼いでも、輸出しない限り、GDPには反映されません。国際収支の面では、ロイヤルティー収支あるいは資本流入という形で反映されても、それがすぐに日本経済の向上には繋がらないのです。
マクロとミクロの乖離は、簡単には解消されないのです。
ヘッジファンドの売りが、経済の停滞と、企業収益の好調との乖離をついたものであるならば、これは現在の日本経済が抱えている問題点そのもので当分解消されないからです。だからといって、ヘッジファンドの売りが成功するとは限りません。このような矛盾はどこの先進国でも抱えている問題だからです。
株価を支えるのは企業業績です。好調な企業業績が維持されれば、株価は反転します。それを支えるのが、政府系金融機関というのはちょっとさびしい感じもしますが、いずれインフレであぶりだされた個人資産が、相場を支えるようになります。
日銀は1日から連続6日間、ETFを156億円買い続けています。おそらく年金を始めとする政府系金融機関も買っているはずです。政府日銀は、株価下落が経済の腰を折り、安倍内閣の支持率を下げるということをよく知っているからです。
外人売りは今後も続きますが、別に心配は要りません。それよりもこの際は、銘柄の選別をいっそう進めて、今後とも増益を維持できる企業に狙いをつけましょう。いずれ外国人の売りも止まり、株価も上昇傾向がはっきりするはずです。
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