こういう表題は多くの医師に嫌われるかも知れない。
しかし、医療行為もお金を取って行っている以上、ビジネスであり、産業であることは疑いようもない事実。
当事者がどういう意識でやっていようと、医療サービスとお金が交換されてる以上、それは明確にサービス産業。
で、何度も書いてきましたが、産業の成長性は、市場原理と密接にリンクしている。
「より良い製品、サービス、労働により高い価格、報酬がつく」、という市場原理(公正原理)が働けば、製品・サービスの付加価値向上の意欲は高まり、収益性は高まり、産業としての成長性は高まっていくことになる。
医療は命を扱うから、収益、成長を追ってはいけない、、、、これは一見もっともらしく聞こえるが誤り。
命を扱う大事な産業だからこそ、不断のサービス向上、付加価値向上が求められ、そうなれば収益性、成長性は自ずと高まってしまうのです(海外からのお客が増える等)。
逆に収益性、成長性を否定してしまうと、人材も資金も集まらず、付加価値向上、サービス向上は大きく制約されることになる。
付加価値向上、サービス向上させても収益は追わない、利益はそのままでよい、という選択もあるかも知れませんが、そういう医師が全てではなく、また、そういう業界では入ってくる人材・資金も限られ付加価値向上、サービス向上は困難になっていく。 これでは患者のためにならない。
このように、収益向上=付加価値向上なのだから、医療産業もやはり、収益性、成長性を高める努力をしていくべきで、そのためには医療産業に市場原理(公正原理)を如何に働かせるかがカギになります。
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医療産業は非常に特殊な産業である。
命を扱うから特殊なのではない。
命に係わる産業は医療産業だけではない。
建設業でも運輸業でも手抜きや暴走行為があれば命に係わるのです。
医療産業が特殊なのは、市場原理(公正原理)を歪める二つの問題、、寡占と談合が非常に起こりやすい点にある。
寡占、、というか、寡占的状況がなぜ医療産業では起きやすいか?
それは客(患者)の立場が圧倒的に弱いから。
通常の寡占では、売り手の統合により、売り手側が圧倒的に強くなって市場原理(公正)が歪められていくわけですが、医療産業では売り手の統合が無くても寡占的状況が起きやすいのです。
では、談合、、というか、談合的状況が医療産業で起きやすいのはなぜか?
それは医療行為が極めて少数の特殊な専門家(医師)集団で行われるため。
専門家同士の横の連携が他産業よりも強く、ギルド的状況が生じやすいのです。
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医療産業の成長性を高めるには、医療産業特有の寡占的状況、談合的状況を如何に無くしていくかがポイントになります。
寡占的状況、談合的状況があるので、他産業で成功するような自由化政策は医療産業では成功しない。
寡占的状況、談合的状況を放置したまま、自由化を進めれば、売り手側(医師側)が買い手側(患者側)から自由に搾取し放題の状況になるのです(医療費の異常高額固定化)。
これは米国の医療制度が失敗している原因でもあります。
医療産業の寡占的状況を打破するには、、、
1) 買い手側が過剰搾取されないように医療サービスの料金を各サービス毎に固定化すること(これは現行の日本の制度と類似)
2) サービス価格が売り手側の都合でなく、買い手側(患者側)の便益に応じて決まるように(例えば、必要性が低いサービス、容易なサービスに高い価格が付けられないように)、価格のウェイトは買い手側が決めるようにすること(売り手側を関与させない)
3) 価格設定が不当に安くならないように、2)のウェイトに基ずき、医療者が十分な年収を得られるように機械的な価格設定を行政側が行うこと(ここにも売り手側は関与させない)
4) 以上の固定価格に対し、良い医師ほど利益が上がるように(=市場原理が働くように)医療情報サービスを充実させること(医師の腕に関する「買い手側」の情報交換サービス業を充実させる)
、、、、等が必要です。
上記では4)が重要になります。 1)~3)だけでは「社会主義」の悪平等の世界に近く、医療産業の成長性は阻害されるからです。
しかし、4)は純粋に民間事業の分野で、この医療情報サービス業が成功するか否かは、如何に公正に質の良い情報を沢山集められるかがカギになる。
売り手側を排除して、質の良い買い手情報を集めるには、A)情報の質に対する判別能力の向上、B)情報の質に応じた情報提供者への適正な報酬支払い、C)売り手側の広告収入に依らない情報サイト運営、、などが必要でしょう。
現状は、A)、B)が不十分で、売り手側と密着しすぎ、買い手側不利益になってるので、非常に改革余地、新規参入余地、収益増大余地の大きい業種と思います。
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医療産業の談合的状況を打破するにはどういう方策が考えられるでしょうか?
このためには、(ギルド化しにくいように)医師と出身母体の過剰なつながりを弱めること、医師数を増やすこと、医師数を増やしやすくすべく医師資格の階層化を進めること、医師会による談合行為(サービスの横並び化)の監視・摘発等が考えられます。
現状では、医師数が絞られ過ぎており、医師の仕事・収益が十分確保できる反面、病院医師の不足、病院における患者サービスの低下が起きているように見受けられます(異常に長い患者の待ち時間、異常に多い医師の診察数)。
比較的、簡単な医療で大病院に患者集中とならないためにも、医療情報サービスの増大、充実が必要でしょう。
また、医師のギルド化は学閥的なものともリンクしてると思われるので、以前、大学改革の日記で書いたような学閥効用を無くす措置も必要かも知れません(大学への公的資金投入を辞め、全て奨学金に付け替える)