といっても、アドバイスではありません。私自身の40年に及ぶ株式投資の足跡を振り返り、もし「40年若返ることができたなら……、こうしたい」との思いから、初心に立ち返って、投資法をチェックしてみたかったのです。
今年に入って、株価は低迷しています。この欄をご覧になっておられる多くの方も、先行きに不安をもたれておられるのではないでしょうか。アベノミクスに対する期待も、しぼむ一方のようです。
株価は年初から13%ほど低迷していますが、アベノミクスが始まった昨年初頭から見ると、まだ37%も上がっています。私の評価額も、昨年1年間は30%ほどの上昇で、平均から大きく遅れをとっていましたが、今年に入ってからはプラスを維持し、どうやら平均に追いついてきました。
ポートフォリオ中のコア銘柄が、決算発表で大きく値上がりした幸運があったとはいえ、ファンダ中心に組んでいたポートフォリオを、昨年の主流だったモメンタム銘柄に替えなかったのが原因だったようです。
株にとって、運不運はつき物とはいえ、それを消してくれるのが時間の経過です。投資法はいろいろでしょうが、経済の成長が続く限り、長期に所有してれば、資産は増えてゆきます。にもかかわらず、株式投資手法の主流は短期投資のようです。
株を始める場合には、投資の目的を明確に持つことが最も重要です。たいていの人は「儲けるために」と答えるのでしょうが、それでは「なんのために儲けるのですか」となると、答えはさまざまです。私の見る限り、目的をはっきりさせないで、株を始める人がほとんどと思っています。
株には、二つの面があります。勝ち負けを争うゲームと、資産を増やす面とです。本来株式投資の目的は、投資によって企業活動を支援し、経済を発展させ国を豊かにし、その果実として値上がり益や配当を受け取り、個人資産を増やしてゆくということでした。昔の投資の本には、必ず書いてあったのですが……。
1990年のバブル崩壊以降、それまで個人が中心だった売買主体が機関投資家に変わり、さらに2000年以降は、外国人が占めるようになりました。この間、コンピューターの普及と情報革命によって、情報の大衆化と国際化が進み、つれて売買手数料が大幅に引き下げられ、取引量の増大に繋がりました。
個人投資家も機関投資家に負けない投資環境になった結果、利幅で儲けるより数量でこなす売買方法になり、株式売買がより短期に変ってゆきます。短期運用では相場がどちらに動いても、売り買いとレバレッジで利益をあげることができます。
昨年の日経によると、投資家の9割が短期投資家とあります。長期投資が儲からなくなったのは、個人投資家だけではありません。年金、保険、銀行と長期で資金を運用している機関投資家も同様です。長期投資で儲からなくなった機関投資家は、運用先を株以外のものに移すか、ヘッジファンドに委託するようになってきました。これも短期売買の一因となっています。
日本経済も証券会社も、短期投資家で食っている現状は、いつまで続くのでしょうか。
流れの変化は、徐々に現れてきています。市場を動かす力が、外国人のヘッジファンドから、国内の年金、事業法人、長期保有を目的とした個人に移り、値上がり銘柄も、モメンタム系からファンダメンタルへと変わってきています。
私の投資の目的は、「長期の資産形成を通じて老後を豊かに送る」ことにあります。
なぜ、短期でなく長期なのでしょうか?
答えは、長短投資法の特徴と手法を、比べてみれば明確です。特に、利益配分の方法に注目してください。
▽ 短期取引=ゲーム(ギャンブル、ばくち)
利益は、参加者の掛け金から生まれ、必ず損失者が生じる。相場の方向に関係なく売買差益が狙え、小金があれば、いつでも参加し、いつでも退出できる。
手法としては、チャート重視と損切り。ゲーム感覚だから大金を動かさない代わりに、資産形成意欲もない。
▽ 長期取引=資産形成
利益は、企業の利益配分から生じ、参加者全員で値上がりと配当を享受できる。経済のパイが大きくなれば、企業の利益も増え配分も増加するが、選ぶ会社によって差が出る。相場が上昇しているときに、メリットが最大になる。
手法としては、ファンダ重視と塩漬け。大金を動かすことで資産形成が計れる。
株式投資を始めるきっかけが、小額資金をゲーム感覚でという人は結構います。でも1年以内に資金が底をつき、やがて退場という人がほとんどです。
カジノで、プロ相手にポーカーをするようなもので、とうてい勝ち目がありません。資金、情報、知識、経験、どれをとっても彼らにはかないません。特に最近では、取引方法や、税法までも彼らに有利になり、個人が何十人かかってもかなう相手ではありません。
それでも昨年の相場のように、売り買いのベクトルが一致しているときは、おこぼれで儲けられたのしょうが、今のような難しい相場では歯が立ちません。
彼らに勝てるのは、長期投資以外にはありません。どのような理由から株を始めるにしろ、目的をはっきりさせて、長期投資に望むのです。アベノミクスでインフレが定着する今こそ、そのチャンスなのではないでしょうか。
投資方法が決まれば、銘柄の選択、ポートフォリオの組み方が明確になります。それではまた来週まで。皆様のご活躍期待しております。