竹中平蔵・慶大教授(63)が、今や完全復権だ。小泉構造改革で日本をダメにした張本人が再び権力を思うままに操りつつある。
大宅賞ジャーナリストの佐々木実氏は、「竹中氏は自分の考えを政策や法律に落とし込む環境づくりが非常に長(た)けています」と、こう続けた。
「麻生副首相らの反対で、『経済財政諮問会議』のメンバーにこそなれませんでしたが、より法的権限の弱い『産業競争力会議』の民間議員として特区構想に邁進しん(まいしん)。国家戦略特区法を制定する段階で、特区諮問会議を経財諮問会議と同格である首相直轄の『重要政策会議』に位置づけ、自分もメンバーに収まった。
産業競争力会議だって、いつの間にか経財諮問会議と合同開催になっています。竹中氏は安倍政権の1年余りで、自分に権限が集中する『器』をつくり上げたのです」
恐ろしいのは、昨年12月に秘密保護法のドサクサに紛れて成立した特区法の中身だ。
諮問会議のメンバーの条件として〈構造改革の推進による産業の国際競争力の強化に関し優れた識見を有する者〉という一文が盛り込まれた。
「つまり竹中氏のような急進的な構造改革派しかメンバーになれません。規制緩和の旗振り役がすさまじい規制を設けたのです。しかも、安倍首相は国会答弁で『会議の意思決定には“抵抗大臣”となり得る大臣は外す』とまで言い切った。
政権内で再浮上した『残業代ゼロ制度』には厚労省も難色を示していますが、厚労相が抵抗すれば政府の意思決定に関与できない。
国民の大勢は『ノー』でも反対派の声はことごとく無視され、ごく少数の急進派の意見だけがまかり通っていくのです。まさに『1%が99%を支配する政治装置』と言うべきでしょう」
ここまで竹中氏らが強引に推進する「構造改革」とは何なのか。小泉政権の大臣時代に部下の官僚から、その定義を問われると、竹中氏は「ないんだよ」とアッサリ認めたという。
「とにかく規制を取り払って競争をうながすのが第一で、目指す社会ビジョンは極めてアヤフヤです。小泉構造改革のスタートから約15年。
派遣労働の拡大など、国を挙げて規制緩和の綻びを検証すべき時期に来ているのに、彼らは不都合な事実に目を伏せる。
緩和のアイデアが出尽くすと、今度は医療・教育・農業などビジネスの尺度だけでは測れない規制を『岩盤規制』と名付け、ひたすら緩和を推し進める。竹中氏は人材派遣大手『パソナ』の会長でもあるのです。
利害関係のある人物が雇用規制の緩和に関与するのは、政治が生む利益を追い求める『レントシーカー(利権あさり)』そのものです」
単なる利権屋が「日本を代表する経済学者」のように振る舞っているのは、佐村河内某よりタチが悪い。