これは著名投資家ジョージ・ソロス氏の新年寄稿(NPO言論組織「プロジェクト」)の冒頭部分である。最初に「日本経済」について言及している。
そして、2014年の世界経済のリスクは「中国」と断じている。その要旨を以下にまとめた。
13年、中国人民銀行の債務抑制策により実体経済悪化の兆候が出始めるやいなや、党の新指導部はただちに金融緩和を命じた。
ここで新指導部が構造改革より経済成長を優先させたことは正しかった。構造改革に緊縮財政が伴えば、経済がデフレスパイラルに陥るリスクがあったからだ。
しかし成長優先には債務膨張リスクが伴う。特に輸出・投資主導型経済運営の結果、家計部門が国内総生産(GDP)の35%にまで縮小。貯蓄が経済成長を賄うには不十分になった。その結果、さまざまな債務が急増しているのだ。
この成長と債務のジレンマへの対応が、世界経済にも大きな影響を及ぼす。ソフトランディングできれば、政治・経済改革は成功する。しかし失敗すれば新指導部への信頼が損なわれ、国内では弾圧、海外では軍事対決の結果となろう。
これが、ソロス氏の懸念するチャイナリスクなのだ。
さらに、同氏は「欧州リスク」にも警戒感を強めている。
といっても、欧州「債務」危機の最悪期は終わった。
今後の欧州危機は、「政治」から発するだろう。
欧州連合(EU)は「内向き」になり、シリアやウクライナなどの外部の脅威に対して適宜対応できなくなっている。ただし、ロシアの脅威が再燃すると、欧州が団結する可能性はある、という。
なお、今のメルケル首相は、第一次大戦後、ヒットラーを台頭させたフランスと同じ過ちを無意識のうちに冒しているとも指摘している。巨額の賠償金をドイツに課したことでドイツ国内極右派台頭を誘発したことを指していると思われる。
ソロス氏は、メルケル首相の債務国への厳しい要求が、欧州各地域での極右政党の勢力拡大現象を産んでいると述べているのだ。
最後に米国経済については、先進国最強国として高く評価している。
その理由としては、シェール革命、金融セクターと家計部門の債務削減の進展、量的緩和政策による資産価格上昇、住宅・雇用・財政問題の好転を挙げている。
アキレス腱(けん)であった「ねじれ議会」の二極化リスクに関しても楽観的だ。共和党の茶会党派は「やりすぎた」。政府機関一部閉鎖以降、共和党の主流が反撃を始めたので、本来の二大政党制度が復活するだろうと予言している。
以下私見・・・・・
切り口が鋭く頷きながら読んでしまいました。
質的量的緩和に踏み込んだ日本の行く先についての問題意識は同感
だが、問題が大きくクローズアップされるのはまだ数年先だろう
今年は中国リスクが問題。
この点についての考察を次回UPしようと思う。