逃げたら帰れない

投財堂さん
投財堂さん
2月6日の市場は閉鎖致しました。



騙されてはいけない!

この市場には何かが隠れている。

その何かがハッキリするまでは、安心するな。

逃げろ、逃げろ。

そして逃げたまま帰ってくるな!

















・・・て、おい!





ここは、黙って買っておけばOK。

決して逃げる事なかれ。

今逃げれば、2度と帰って来れなくなるでしょう。

帰りたくても帰れない・・・嗚呼

それがどんな地獄か判りますか、アナタ。



※※※ 



男は駅に着いた。

結構酔っている。

時刻は深夜0時。

昨夜から降り続けていた雨はすでに止んでいた。

自宅までは歩いて5分の距離だ。

酔ってるとはいえタクシーで帰る距離でもない。

幸い雨も止んでいる。

「てへへ、酔いを醒ましながら帰るか」

歩き出す男。

しかし・・・

歩けども歩けども自宅に着かない。

「おかしいなぁ~~何で自宅に着かんのだ!」

そのうち周りの景色に見覚えがないのに気づく。

「え? ここはドコ?」

「え? え?」

慌てて駅の方へ引き返そうとするが

もはや後の祭り、アフターカーニバル。

駅にも戻れなくなっていた。

時刻はすでに深夜の2時を回っている。

駅に着いてから2時間も経過している。



???



「何で2時間も!?」

男の感覚では駅に着いてからまだ10分位しか経っていない。

うわぁぁぁぁぁ~~~

男は闇雲に走り出した。

もはや、どこをどう走っているのか、全然判らない。

・・・

・・・

帰りたくても帰れない。

この時、男は底知れぬ恐怖を感じた。

持っていたはずの傘もなくなっていた。

「何でよ!!」

・・・・・

その後、どこをどう歩いたのか全然覚えてない。



気づいたのは自宅のベッドだった。

すでに朝になっている。

「俺は・・・・・」

帰ってきた記憶すら男にはなかった。

家人の話では、男が帰宅したのは

朝の5時頃だったらしい。

駅に着いてから5時間経過している。

5分で帰れる距離を5時間!

その間、どこかで寝ていた記憶もなかった。

俺は決して寝ていない。

5時間もどこをほっつき歩いてたのだ、俺は。



その日の午後



男は駅まで歩いてみた。

昨日の行動を辿るつもりなのだ。

当然、駅まで歩ける。

5分だ。5分で着いた。予想通り。

なぜ、何時間も彷徨っていたのだ。

今となっては判らない。

判らないが・・・

駅前の公衆電話ボックスの前に

ボロボロになった傘が散乱していた。



男の傘だった。



男の記憶が少し甦った。

そういえば、駅に着いた時あの公衆電話から

自宅に電話したはずだ。

あの時・・・・・

そう。何度電話しても自宅へ繋がらなかった。

何回かけても他人の家にかかってしまうのだ。

何度かけても繋がらない電話に苛立った男は

傘を振り回し・・・地面に傘を叩きつけた。

間違い電話を受け続けた人こそ

受話器を叩きつけたかったに違いない。

いい迷惑だ。少しづつ思い出してきた。



そんな事もあった。

何で思い出せなかったのだろう。

しかし、それ以降の事は全く思い出せなかった。



男はボロボロになった傘を拾い上げ

後悔の念に苛まれながら帰宅した。



※※※



帰りたくても帰れないって、ホントに怖いですね皆さん。

この時以降、男は酒に逃げる事をやめた。

逃げたら帰れなくなる・・・そう決めたのだ。



だから、逃げずに買おう!!



・・・て、話が長いわ!!





※ 男は私である。 ※

これは20数年前に経験した実話だ。
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