エリオット波動分析なんで話半分に見ておくのがいいけれど、
円売りポジションが大量に積み上がっているのは事実で、
一旦利食いがはじまると結構円高が進みそうではある。
実際、今年のドル円の安値を95円~98円と予想しているアナリストは多い。
でも、本文中にもあるように、皆が予想する円高進行は
さらなる円安方向へ進むための調整にすぎない。
円高が進む時期や円高になった際の値幅の予想は難しいが、
こういうリスクがあることを認識しておくことが大事。
1月10日(ブルームバーグ):過去2年余り続いた円安の大反動が起きる-。相場の動きから波動パターンを読み取り、今後の展開を予想するエリオット波動分析によると、今年のドル・円相場は1ドル=90円割れの水準まで円高が進む可能性があり、デフレ脱却を目指す安倍晋三政権にとって試練の年となる恐れもある。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮田直彦チーフ・テクニカルアナリストは、昨年10月8日の円高値96円57銭を起点とし、105円50銭程度をターゲットとする第5波が終了した可能性があるとし、「この見方が正しければ、2年間の円安に対する反動が今年は起こる。つまり大きな円高だ」と指摘。「アベノミクス相場が始まってから、これまで1度も10円を超える円高になったことはないが、今年はそうしたことが起こるだろう」と予想する。
1930年代に米国のラルフ・エリオット氏が考案したエリオット波動理論は、相場はトレンドを構成する5つの波(推進波)と、その後の調整を構成する3つの波(調整波)の計8波動で1つの周期を形成するとしている。今回のようなドル・円の上昇相場では、推進波5波のうち第1、3、5波が上昇、その間の第2、4波が下降となり、5波動完了後は下降、上昇、下降の調整3波が続くとされる。
2012年2月1日の円高値76円03銭から始まった円安の第1波は同3月15日の安値84円18銭まで続き、第2波では9月13日の77円13銭まで円高が進んだ。その後、第3波で昨年5月22日に付けた約4年半ぶりの安値103円74銭まで円安が進行。第4波では4カ月以上にわたって三角もちあいが続き、10月に最後の円安局面となる第5波が始まった。
20日移動平均線
宮田氏は、ドル・円が昨年11月上旬以降、一度も割れることのなかった20日移動平均線を割り込み、12月17日の円高値102円50銭も抜けると、第5波が終了し、円高の調整第1波が始まったとの「手応えが強まる」と説明。その上で、早ければ向こう3カ月程度で100円ちょうど前後まで円高が進む可能性があるとし、さらに第2波を挟んだ後、10月ごろまでに11年10月末に付けた戦後最高値75円35銭からの半値戻しの90円台や同61.8%戻しの86円台まで円高が進む可能性があると分析する。
円は今月2日に08年10月以来の安値となる105円44銭を付けた後、反発。6日には一時、20日移動平均線(104円13銭)を突破し、2週間ぶり高値となる103円91銭を付けた。10日午前の円相場は104円80銭台で推移し、20日移動平均線は104円49銭前後に位置している。
大胆な金融緩和などでデフレ脱却を目指す安倍政権の経済対策を背景に円は昨年、対ドルで18%下落した。これは1979年以来の下落率で、ブルームバーグ相関加重指数でも17%安と主要10通貨中値下がり率トップだった。円安による景気回復期待から日経平均株価 は昨年1年間で57%も上昇し、12月には6年ぶりに1万6000円台を回復した。
40年間の円高終了的中
円安進行は輸入価格の上昇を通じて、約15年間下落が続いていた日本の物価を押し上げている。11月の消費者物価指数 (CPI、生鮮食品を除く)は前年比1.2%上昇と2008年10月以来の高い伸び率となり、日本銀行が2年程度で達成するとしている2%の物価安定目標の半分余りに達した。政府は12月の月例経済報告で、物価動向を「底堅く推移している」と判断、4年2カ月ぶりに「デフレ」の表現を削除した。
宮田氏はかつて、1971年の「ニクソンショック」を機に崩壊した固定相場制時代の360円から約40年続いた円高トレンドが2011年に75円程度でピークを付けて終了するとの予想を的中させた。また、円が4年半ぶり安値を付け、その後反発した昨年5月には、第3波の円安局面が間もなく終了し、第4波の円高局面を経た後の第5波で「秋から2014年春」の間に105円50銭程度まで円安が進むと予想していた。
ブルームバーグがまとめた為替予測調査では、14年は引き続きドル高・円安傾向が続き、ドル・円は年末に110円(予想中央値)に達するとの見通しが示されている。
日米格差
みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは、米国は財政の足かせが取れることで成長が加速する一方、日本は消費増税などの影響もあり減速やむなしとの予想が多く、「景況感格差やそれを背景とした日銀の追加緩和期待と米国のテーパリング(量的緩和縮小)といった金融政策格差の広がり」を背景に、「ドル・円の先高観はかなり強い」と指摘。自身も年末に向けて「110円を超えるような」円安を予想する。
一方、ウエストパック銀行の為替ストラテジスト、ジョナサン・キャベナー氏(シンガポール在勤)は、15年10月に10%まで引き上げる予定の消費増税が「株式市場のセンチメントに対して逆風になり始めている」とし、株安がリスク回避の円高をもたらす可能性を指摘。日銀の金融政策についても「すでに限界に達しているとは思わないが、大規模緩和を打ち出した昨年春よりも緩和余地は確実に小さくなっている」とし、追加緩和に動いても前回ほどのインパクトは見込めないと読む。
ブルームバーグがエコノミスト35人を対象に先月行った調査では、消費税が8%に引き上げられる4-6月を中心に、9月までに日銀が追加緩和に動くとの回答が大勢(28人)を占めた。米連邦準備制度理事会(FRB)は景気回復に伴い、今月から量的緩和の縮小を開始する。
ウエストパック銀は年末のドル・円相場を99円と予想。これはブルームバーグ調査がまとめた予想の中で2番目の円高水準で、45機関の予想レンジは96円から120円となっている。
高く飛ぶためかがむ年
日銀金融市場局の藤原茂章氏は、昨年12月の日銀レビューの中で、株価と為替の同時相関関係の強まりに着目した「自動的な取引のウエイトが高くなっている状況では、何らかのショックが市場に加わり、株価がいったん下落すると、株安⇒円高⇒株安といった連鎖を通じて市場のボラティリティが増幅されるリスクがある」と指摘した。
ブルームバーグ・データによると、日経平均とドル・円相場の相関係数 (120日ベース)は0.44と、1988年以来の高水準となっている。同係数は1に近づくほど双方の正の相関が強いことを示す。12年2月には0.01まで低下していた。
商品先物取引委員会(CFTC)によると、ヘッジファンドや他の大口投機筋の対ドルでの円のネットショート (売り越し)は、昨年12月24日時点で14万3822枚に拡大し、円を借り入れて高金利通貨で運用する円キャリートレードが全盛だった07年7月以来の高水準を付けた。
三菱UFJモルガン・スタンレー証の宮田氏は、「全てがひっくり返るわけではないにしても、こうしたポジションの巻き戻しが円高のかなりの推進力になる」と予想。その上で、調整3波動が終わった後は、再び30円規模の円安トレンドが始まると分析。「株に対しても同じことが言えるが、今年はドル・円がより高く飛ぶためにかがむところといった年」になるとみている。