電気に敏感なナマズ
宮城県立看護大学の浅野教授はナマズの電気感覚に関する研究を神経細胞サイズから行いました。 ナマズはコイなど他の魚種にはない水中の微弱な電位差を感じる能力があり、その感覚の鋭さは人間やコイなどが感じる能力の100万倍に近い0.05μV/cm付近で、特に1Hz~30Hz程度の低周波に敏感であると報告しました。この感覚の受容器は頭部を中心にナマズの表皮全体に分布する小孔器です。たとえば、琵琶湖のような広い湖に乾電池が1個投げ込まれたとすると、そのことを数キロメートル先で感知できる能力とであるようです。
ナマズの電気感覚に関する実験装置(浅野,1985)
このように、ナマズは電気に非常に敏感であることから、実際に地震に関係する電気的な変化(電磁波)を観測している防災科学技術研究所の藤縄博士らが、電磁波の記録と東京都水産試験場のナマズの行動量との対比を試みました。その結果、地中の電気的な変化(パルス状の電界変化)が激しい時にナマズの行動が活発という可能性があることが解ってきたようです。特に1992年2月2日の東京湾で発生したM5.9の地震の一週間程前に電磁波のパルス数とナマズの行動量の増加が認められ、地震との関係が疑われています。
地中電界変動量とナマズの行動量(藤縄・高橋,1994)
ナマズよりウナギが電気的に敏感?
大阪大学の池谷教授は地震に先行するナマズの異常行動などの動物異常行動は電気的なシグナルが関係しているのではないかとの視点から様々な研究や実験を行っています。そのうち、ナマズとウナギに対しても電気的な反応に関する実験を行いました。 この結果によると、ウナギは0.5V/mの電場強度で騒ぐが、ナマズは5V/mの強度まで騒がなかったとして、ウナギの方が電気的に敏感ではないだろうかと指摘しています。 前述の「安政見聞誌」には、ウナギを釣りにいったが、ナマズが騒いでいたことが書かれていることから、これはいち早くウナギが地震に関係する微弱な電気的シグナルを感知して姿を隠し、遅れて大暴れしていたナマズが釣られたのではないかとの推測ができるとしています。