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順張りと逆張り(3)
ある人が旅行に出たとき、僕(しもべ)たちに自分の財産を預けることにした。
それぞれの力に応じて一人には5タラントン、一人には2タラントン、もう一人には1タラントンを預けて旅に出た。
~(中略)~
その後、僕たちの主人が帰ってきて、彼らと清算をはじめることにした。
<僕1>
「ご主人様、5タラントンをお預けになりましたが、ご覧ください。他に5タラントン儲けました。」
<僕2>
「ご主人様、2タラントンをお預けになりましたが、ご覧ください。他に2タラントン儲けました。」
<僕3>
「あなたの1タラントンを土に埋めて隠しておきました。ご覧ください。これがあなたのお金です。」
すると、主人は答えた。
「そのタラントンをこの男から取り上げて、10タラントン持っている男に与えよ。誰でも持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまで取り上げられる。その役立たずの僕を外の暗闇に追い出せ。そこで、泣きわめいて歯ぎしりするがよい。」
*タラントン・・お金の単位(円)
*********************
これは、今からおよそ2000年前、新約聖書に書かれている「タラントンのたとえ」という話だが、この考えは現代においても十分通用するだろう。
投資の世界においては、資金の少ないものは必ず負け組に入るという法則が存在しているのだ。たとえば、投資で必ず損をする方法として、信用全力がある。本来なら自分の持っているお金が十分あれば、こんなことをする必要がないのであるが、お金がないトレーダー(借金投資家)は、お金を借り入れざるを得ないので、結果としてマージンコールで事実上無一文になる可能性があるのだ。
こうした例を的確に説明するものとして、マーチンゲール法があるだろう。
相場で安定して勝ち続ける手法として、これは昔からあるやり方だが、トレードの世界においては資金余力のないものから次々に破産していく逆張りナンピン手法である。
以下は実際にシステムトレードでこの手法を検証した結果である。
途中までは安定して利益を上げているが、注目すべきは青のライン(決済残高)と緑のライン(有効証拠金残高)である。これを見ると、途中までは緑と青のラインが同じペースで上昇しているが、あるところから緑のライン(有効証拠金残高)が悪化。それでもなお合計残高が増え続けているが、これが100%を切った水準まで下がったとたんに、雪崩の如く資産が収縮。事実上破産していることが分かる。
なぜ、こんなことが起きてしまうのか?
これは、想定していた以上に相場が連続して上がり続けたり、下がり続けた時に起きる。
マーチンゲール法では、投資資金を売買にしている限り、必ず勝ち続ける必勝法であるが、たとえばコインを振って
①裏→表→裏→表→裏→表→?
②裏→裏→裏→裏→裏→裏→?
が出たとき、次に出るのは裏表どちらの確率が高くなるだろうか?
答えは、どちらの確率も「同じ」ということになる。
株価が無限に下がり続けているからと言って、次に上がる保証はどこにもないのだ。
カジノなどのギャンブルで負けたからと言って、掛け金を2倍に増やすやり方(逆張り)では、確率は変わらないし、勝ってから掛け金を2倍に増やす「逆マーチンゲール法」(順張り)と期待値は同じものになるのだ。
10%変動する株を1000円で買った場合の期待値は(余力資金は2回まで)
①マーチンゲール法の期待値は
一回目に勝つ(50%)
1000 × 1/10 = 100
一回目に負けて2回目に勝つ (25%)
-(1000 × 1/10) + 900 × 2/10 = 80
一回目に負けて2回目に負ける(25%)
-(1000 × 1/10) - 900 × 2/10 = -280
(計) 100 × 1/2 + 80 × 1/4 - 280 × 1/4 = 0円の利益
②逆マーチンゲール法の期待値は
一回目に負ける(50%)
-(1000 × 1/10) = -100
一回目に勝って2回目に勝つ(25%)
1000 × 1/10 + 1100 × 2/10 = 320
一回目で勝って2回目で負ける(25%)
1000 × 1/10 - 1100 × 2/10 = -120
(計) (-100) × 1/2 + 320 × 1/4 - 120 × 1/4 = 0円の利益
結果からもわかるように、資金を2倍に増やしたところで、前後の期待値は何も変わらないのだ。
しかし、これに信用余力が関わってくると違った話になるのだ。
以下は、順張りを利用したブレイクアウトの手法を利用したシステムトレードの結果であるがこれを見てほしい。
これは、先ほどの破産型マーチンゲール法の逆をやった場合の動きとほぼ同じなのだが、重要なのは、さっきも書いた青のライン(決済残高)と緑のライン(有効証拠金残高)である。この場合、先ほどのマーチンゲール手法とは逆に緑のラインが青のラインの上方を推移する傾向が見て取れる。
つまり、いずれの場合も期待値は同じなのだが、信用余力で見た場合、ブレイクアウト手法のほうが安全であることが分かるのだ。
で、この2つの結果から、それぞれの戦略について考察すると、
(1)逆張りマーチンゲール法の場合
破産は想定の範囲内でレンジが推移している場合には起こらない。たとえば、為替で、信用全力の上限を1ドル500円、下限を1ドル10円で取引したとすると、損をする確率はほぼゼロの必勝法に成り得るのである。
ただ、これを実行するには、豊富な資金が必要で、一般の貧乏借金投資家には不向きな戦略だ。
まさに、お金持ちが貧乏人から金を巻き上げる戦略の典型例だ。
(ただ、資金がなくても、資産上昇のグラフを株価チャートのようにしてとらえ、ストップロスを設置して、トレールしながらついていくという方法も有効戦略の一つではある。破産する前に投資資金を回収してしまえば、事実上の完全勝利となる。)
(2)順張り逆マーチンゲール法の場合
これは、少ない資金で効率的に運用することに関しては、先に紹介したマーチンゲール法よりも効率的な資金運用が可能となるように思えるが、実はそうではないのだ。次のシステムトレードの結果を見てほしい。
これは、さきほどの順張りブレイクアウト手法を、同じ期間で、トレード回数だけ増やした結果、である。
チャートはトレード回数を増やそうとすればするほどジリ貧になって損をすることを示している。
まあ、これは簡単な説明だけでも十分わかるだろう。
逆張りは、高勝率(損大利小)
順張りは、低勝率(損小利大)
これが意味することは、高勝率(逆張り)の場合、資金を回転させればさせるほど、投資効率が良くなるが、低勝率(順張り)の場合、お金を回転させると損切り撤退が多くなり、大きく負け越してしまうのだ。
つまり、順張りは投資機会を選別する必要があるので、資金効率はそれほど上がらないのだ。
とりあえず、投資においては、それぞれの特性を生かしていきたいところ。
期間にもよるが、私は順張り2割、逆張り8割の投資スタイルを貫くようにしている。
(根拠はないが・・)
P.S.
最近、日銀がマネタリーベースを二倍にするとか言っていたが、この戦略はマーチンゲール法に分類される。前述したように、この戦略は、お金を無限に刷ることができる日銀にとっては好都合だ。
しかし、マーチンゲール法の資産推移をみれば分かるように、何かがきっかけで、思いもよらぬ破産が待ち構えているのは注意したいところだ。
*日銀が下がり続ける日本経済を逆張りするには、下がるたびに投資資金を倍にしなければならない。しかし、これにも限界があるということ。このセオリーが崩壊したとき、円の暴落は雪崩のようになる可能性あり。
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