ここ半世紀の間に、バブル現象を起こしたのは、1990年の資産バブルと2008年アメリカで起きたリーマンショックの2回だけです。いずれも株価の暴落が社会現象にまで展開し、その後の経済の建て直しに時間が掛かりました。
ただ、株価が異常に高騰し弾けた株価現象は、部分的にはかなりの頻度で起こっています。
2000年3月10日、アメリカ、ナスダック市場が5,048を記録し、いまだにこの水準を抜けません。アメリカのITバブルは日本にも波及し、99年ころから通信、コンピューター関連などのいわゆるIT関連の企業群が、10倍20倍に上昇しました。恩恵に浴したのは3割程度で、全体には広がらず、2000年3月には光通信の疑惑発覚で、同社株は20日間ストップ安をつけ、最高値から100分の1にまで急落、日本のITバブルの幕を閉じました。
05年から06年にかけての新興市場バブルも、ライブドアが大幅な分割を繰り返し、見せ掛けの時価総額を上げてゆくことで、市場にブームを引き起こしました。06年1月に証券業法違反の疑いで、ライブドアに地検の捜査が入ると、700円だったの株価は一気に急落し紙くずとなってしまいました。この年、大証ヘラクレス、東証マザーズ市場は、年初から5割以上の暴落となり、以後今回の相場まで、新興市場に日が当たることはありませんでした。
今回の上昇過程でも、新興市場銘柄のベンチャー企業や一部上場会社で、無配で収益力のない会社の株が、ストップ高を演じるなどバブルに近い動きを見せています。アベノミックスによる超金融緩和で、外国人を含む余剰資金が、値動きの軽いこれらの株に集中した結果で、前2回のミニバブルと似た点が多いように思われます。
今回の暴落劇の最終段階で、これらの銘柄も大幅な下落をしましたが、前2回との違いは、弾けの余波がほかの(まともな)株に広く影響したことです。これは、機関投資家の売買プログラムが、ボロ株の暴落現象を検知し、全体を売るように組まれているためと推測できます。
ヘッジファンドは、このプログラムを逆手にとって、品薄値嵩株をまず理屈のつかない株価に仕立て上げ、暴落の際に投げることで下げを加速させ、大儲けしたのです。その背景には、10兆円も買いこんだ外国人が、いずれは引き上げるという市場の不安心理を利用したことは間違いありません。
問題は。ヘッジファンドに利用されたこれらのいわゆるボロ株の行方です。彼らはとっくに売り抜けていますが、それでもまだ高値付近にあります。もう一度高値をねらう動きを見せますが、上値には大量のシコリ玉が残っていますので、前回の高値を抜くのは容易ではありません。
ファンダメンタルで買われた株については、下落しても落ち着きどころが分かりますが、ファンダを無視して買い上げられた株については、通常、半値8掛け2割引で、大体3割くらいになるとされています。
ボロ株で儲けられた方は、その蓄積がある間にもう一度参戦し、うまくゆけば儲けに繋がる可能性はあります。始めての人は、単に安くなったからといって決して飛びついてはいけません。ボロ株を掴まされるのはたいていの場合、天井で買うのではなく、2番天井を付けに行くときに買わされることがほとんどです。
株価がここまで下がってくると、買いたい銘柄がゴロゴロあります。全体のPER、配当利回り、PBRも驚くほど低くなり、ものによっては民主党政権下のあの暗黒時代に逆戻りしたものさえあります。下落懸念の大きいボロ株をねらうより、ファンダに着目した銘柄を拾って、アベノミクスの原点に戻った投資行動を取られることを勧めます。
ファンダを無視して上げたボロ株でも、必ず誰かのところに納まります。誰がジョーカー(昔だったら○○の2文字で済んだのですが)を引くのでしょうか?