上着のフードを遊具に引っ掛けて首が絞まったり、裾のひもを踏んで転んだり-。意外と多い洋服に起因する子どもの事故を防ごうと、経済産業省は有識者らの検討会を発足させ、子ども服の安全基準作りに着手した。二〇一三年度中にも日本工業規格(JIS)を策定したい考えだ。
「フード付きの服は着せないでください」。東京都文京区の女性会社員(40)は昨年春、長女(2つ)を保育園に入れた時に園から注意された。危険性は知ってはいるが「売り場にはフード付きが多くて、つい買ってしまう。今はおとなしい娘も、成長して目が届かなくなったらと心配。素材も含めた服の安全性を考えてほしい」と話す。
東京都が〇六年、一~十二歳の子を持つ親約千二百人にインターネット上で行ったアンケートでは、ひやりとした事例も含め、全体の77・0%が事故を経験。具体的には「裾が物に引っ掛かって転んだ」「ファスナーで顔や首を引っかいた」などで、16・5%が実際にけがをしていた。
こうした調査を受け、業界団体の全日本婦人子供服工業組合連合会は〇八年以降、子ども服の安全指針を策定。「七~八歳未満の服はフードや襟首にひもを付けないことが望ましい」などと定めた。だが拘束力はなく、ネット通販など流通形態の多様化で十分に浸透していないのが実情だ。
昨年三月には東京都の四歳の女児が自宅玄関を出る時、パーカのフードをドアの取っ手に引っ掛けて首が絞まり、入院する事故も起きた。事例を報告した日本小児科学会は「『気を付けましょう』では予防できず、衣服の構造を変えることが必要」と指摘する。
経産省によると、米国では死亡事故も発生しており、米国や英国などは事故情報を分析して安全規格を策定。その後、事故が減少したという。
昨年十月に発足した経産省の検討会はメーカーや消費者団体の代表者らも参加。海外の規格を調査した上で春以降に規格の原案を作成する。
子ども服のミキハウス(大阪)は顧客の母親から「襟首のひもを子ども同士が引っ張って危険」との声が寄せられたのをきっかけに、ひもをつけないデザインに変更するなど独自に取り組みをしてきた。同社の上田泰三品質管理課長は「自主的な指針ではメーカーによって考え方が違う。安全な物作りのため、国が指針を示してくれた方がいい」と歓迎している。