UBIC 守本正宏社長
電子証拠開示、米で企業の訴訟支援 元自衛官、法廷で日本守る
東証マザーズ上場のUBICは訴訟大国の米国で民事訴訟に巻き込まれた日本企業の法廷戦略を裏方から支える。電子メールなどの電子データを証拠として示す電子証拠開示(eディスカバリー)という訴訟手続きを支援する日本唯一の専業企業だ。創業社長の守本正宏は元自衛官。ベンチャー企業経営者へと立場は変わったが、「日本を守る」という信念は揺るがない。
電子証拠開示では訴訟当事者が電子メールなどの証拠資料を相手方に要求できる。同社は顧客企業や弁護士の依頼を受けて膨大な電子データを預かる。独自システムで検索・解析し証拠として提示すべき資料を抽出。米国の同業者には日本語向けの解析システムが少なく、同社が業績を伸ばしている。2013年3月期の連結売上高は前期比17%増の60億円を見込む。
守本は「訴訟とは関係のない日本企業の機密情報まで米国に流出してしまう」と警鐘を鳴らす。電子証拠開示の支援業務を手がけるのは同社以外は米国企業ばかり。守秘義務はあるが、実際のデータ解析作業は下請け企業が担当し、機密保持がどこまで徹底されているか懸念が残る。日本企業が国際競争で不利になりかねないという危機感が行動力の源泉だ。
将来の夢は宇宙飛行士だった。その近道と考えて防衛大学校に進み、航空自衛隊のパイロットを志した。「子供のころに戦記ものの本をたくさん読み、国を守りたいという意識が強かった」。ただ、防大在学中に視力が悪化しパイロットはあきらめる。1989年に海上自衛隊に入り護衛艦勤務に就いた。
家庭の都合で94年に海自を退官し、民間企業に転じてから数年後に転機が訪れた。防大の先輩から米国に電子証拠開示支援というビジネスがあることを聞かされる。調べてみると日本でこの事業を手がける企業はなく、「それなら自分がやる」と2003年にUBICを立ち上げた。
米国の同業者の日本代理店としてスタート。10年に日本語の解析に特化した自社システムを開発し、作業効率を向上させたことが飛躍のきっかけとなった。11年3月期以降、最高益を更新し続けている。
「米国では事業を拡大するほど訴えられるリスクは増える」。守本は企業の海外展開に訴訟対策は不可欠と説く。最近は韓国企業などにも顧客を広げている。「日本を守る」から「アジアを守る」へ。電子証拠開示で不利な状況にあるアジア企業を支え、業界トップをめざす。=敬称略
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