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利き腕失っても腕前残った 夫婦で織りなすコスプレ服人気

 



「一着一着、全力を尽くして作っています」と話す湯沢圭一さん(左)と三枝子さん=宇都宮市で






 

 全国から注文が舞い込む人気の衣装店が宇都宮市にある。夫婦二人三脚でオーダーメードに応じ、丁寧な手仕事を続けている。夫は皮膚がんで右腕を失ったが、今も変わらずミシンを操る。手掛けるのは、アニメやゲームの登場人物をまねる「コスプレ」衣装。がんを克服した夫婦は「生きていればなんとかなる」と話す。 

 「忙しいときは毎月二十着の注文が続いた。二人だけですから、ほどほどがいいですね」。宇都宮市伝馬町で「衣装屋りぼん」を営む湯沢圭一さん(57)と妻の三枝子さん(54)が視線を交わした。

 作った衣装は数知れない。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の海賊、人気のビジュアル系バンド「ガゼット」、ネットなど仮想空間の女性キャラクター「初音ミク」…。

 もともと洋服の小売店だった。婦人服の仕立職人だった湯沢さんの母親から技術を学び、オーダーメードも受けるように。コスプレに興味はなかったが、地元の女子高生の注文を機に口コミで依頼が相次ぎ、一九九九年から製作を始めた。

 「いい素材が見つかるかどうかで差が出る」。生地にこだわり、素材探しに都内の店を回る。三枝子さんが、袖丈や太もも回りなど十数カ所を採寸したデータで型紙をつくり、布を裁断。湯沢さんがミシンで縫い上げる。

 仕事は波に乗ったが、二〇〇三年春に湯沢さんの右腕にがんが見つかった。切断するしかなかった。「利き腕を失えば仕事ができない」。一度は手術を断ったが、転移すれば命にかかわる。子どもは四人。決断を後押ししたのは湯沢さんの父親の一言。「生きてさえいればなんとかなる」

 退院して間もなく、仕事を再開。最初は戸惑ったが、次第に左手だけでミシンを扱うコツを覚え、カタカタと心地よいリズムで作業ができるように。

 今では年間四百億円規模とされるコスプレの関連市場。中国製の安価な製品も出回っているが、客は離れない。手仕事の良さと、マイナーなキャラクターも扱える量産品にはない利点がある。

 「イベントやライブで注目を浴びると、皆さんリピーターになってくれる」。こぢんまりと夫婦で商う分、割安で販売できるのが強みだ。

 「片腕がなくても、なんとかなるものですね」。湯沢さんはそう言って笑った。

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