依頼者からの預かり金計約４億６９００万円を詐取するなどしたとして詐欺と業務上横領の罪に問われた福岡県弁護士会の元弁護士高橋浩文被告（５１）の判決公判が１１日、福岡地裁であり、野島秀夫裁判官は「弁護士への信頼を利用して専門知識を悪用しており、規範意識の欠如が甚だしい極めて悪質な犯行」として懲役１４年（求刑懲役１５年）を言い渡した。
判決理由で野島裁判官は「流用の発覚を防ぐため犯行を繰り返している。被害額は巨額で、社会正義の実現を使命とする弁護士への社会的信頼を低下させた責任も大きい」と述べた。
判決によると、高橋被告は２００８年～今年２月、会社４社と個人６人に「仮処分を申し立てるために費用がいる」などとうそを言い、裁判費用と称して約４億３９００万円をだまし取り、さらに和解金として預かった３千万円を着服した。
高橋被告は５月に自己破産が確定し弁護士資格を喪失。９月の債権者集会で破産管財人は、立件分も含め約９億６３００万円の預かり金詐取や流用を確認し、うち約６億９２００万円が返還されていないと説明した。
県弁護士会では昨年３月以降、被告も含め３人の弁護士が預かり金を詐取・着服していたことが発覚。今月９日には、８０代の男性元弁護士が引退する際に十分な引き継ぎをせず、多数の依頼が放置されている問題も明らかになった。
判決を傍聴した被害者の男性は「市民の権利を守るはずの弁護士が、依頼者を食い物にするのは許せない。弁護士会もなぜ被害が拡大する前に不正を発見し処分してくれないのか」と話した。
判決後、県弁護士会は「元会員が実刑判決を受けたことは誠に遺憾。信頼を回復すべく、不祥事防止策を早急に講じる」などとする古賀和孝会長のコメントを発表した。
