Rights issue 有償割当増資

nijさん
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あんまり普及せんなぁ、これ。大運は,大阪証券取引所第2部に上場する港湾運送業者である。過去3回株主に対して,1株につき0.2株の割合で有償割当増資を行っている。その結果,2004年と2005年の割当増資は,応募率はそれぞれ86.3%,92.3%と高かったが,2009年の割当については,応募率は31.1%と低くなっている。これは,払込価格のディスカウント率との正の相関性を示している。つまり,募集株価が市場価格に比べて低いほど株主は増資に応じる傾向がある。 一方,インボイスの事例は明らかに失敗例である。インボイスの採用したスキームには,①株主1株に対して1株を購入できる権利を付与する,②権利行使価格は時価を基準とする(at the money29であった),③権利行使期間は約1年,④新株予約権は上場されない,⑤権利行使しない株主には申込期間に売却の機会を提供する,などの特徴があった。しかし,ファイナンスの規模が大き過ぎたこと。また,権利行使価格を時価としたために,株価が下落すればすぐout of the moneyになり,権利行使が進まなかったこと。さらに,権利行使期間が約1年(11ケ月)で,新株予約権は非上場となったために,新株予約権の流動性がなかったこと,などからほとんど権利行使されない結果となった。 その他にも,株主割当を利用した新株発行の事例としては,2007年4月に発表された佐藤食品工業株式会社,2009年5月に発表された株式会社プラコーの株主割当による新株発行などがある。この2つの事例では,前者は(公表時において)若干のディスカウント価格で,後者は大幅に市場価格を下回る価格(基準株価の81.3%ディスカウント)で発行された。しかし,前者は,時価に近い価格での発行であったためにこのニュースが公表された後は,株価は権利行使価格に収斂し,発行に応じた株数は33%にとどまった。また後者は,大幅なディスカウント発行であったことから,約半分の株数が割当に応じた。しかし,大幅なディスカウント発行において,既存株主間で応募した株主と応募しなかった株主がいる場合,応募しなかった株主は権利落ちによる株価下落の損害を被ることになる30。このように,わが国の最近の株主割当による新株発行の事例は,いずれも会社にとっても株主にとっても満足できる結果を残すことができなかった。しかしながら,2010年3月5日に東証一部上場のマンション開発業者であるタカラレーベンが発表した新株予約権の発行は,英国におけるRights Issueに準じた手法として注目される。タカラレーベンが採用したスキームは,「新株予約権の株主割当」による資金調達である。その概要は次の通りである。① 割当の方法2010年3月31日を基準日として,基準日の株主に対して,普通株式1株につき1個の割合で新株予約権を無償で割当てる。② 新株予約権の内容 新株予約権1個につき普通株1株を300円で購入できる。なお,権利行使期間は2010年5月6日から5月31日までであり,割当後新株予約権は上場されるため,市場での売買が可能になる。③ スケジュール2010年3月5日  取締役会決議、公表2010年3月31日  割当基準日2010年4月1日   新株予約権無償割当効力発生日,新株予約権上場日2010年5月6日   権利行使期間   ~5月31日2010年5月25日  新株予約権上場廃止 以上のスキームは,表2に挙げたこれまでの株主割当増資と異なり,①新株予約権の無償割当であること,②新株予約権は上場され市場で売却できること,などに特徴がある。これは英国におけるRights Issueに類似したスキームといえる。もっとも,英国のRights Issueはコミットメント型といわれ,権利行使されなかった新株をアンダーライターが買取るスキームとなっており,失権による不利益が生じない。これに対して,タカラレーベンの場合は,ノンコミットメント型と呼ばれ,権利行使しない新株予約権は失権して,それについて何ら経済的な補填は受けられない31。したがって,権利行使しない新株予約権の保有者には,失権による経済的な損失が生じることになる32。5.4 日本版Rights Issueの基本スキーム株主割当による資金調達は通常Rights Issueと呼ばれる。したがって,わが国の法令や取引所のルールなどに則した新株予約権の株主割当による資金調達手法を,本稿では「日本版Rights Issue」と呼ぶことにしたい。会社法277条乃至279条は株主への新株予約権の無償割当を定めており,公開会社は取締役会決議によって株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与えることができる。また,東京証券取引所の有価証券上場規程301条及び304条により,上場会社の発行する新株予約権については,原則として施行規則で定める基準に適合するときは「有価証券上場申請書」の提出により,上場が承認される33。今回のタカラレーベンの事例は,本格的な日本版Rights Issueの第一号として評価されうるが,日本版Rights Issueとして想定できるスキームを一般化すると次のようになる。① 既存株主を対象に,普通株式1株につき0.1~1株を取得できる新株予約権を1個発行する。(従来は,新株予約権1個につき1株の権利行使ができないと新株予約権の上場ができなかったが,これが緩和される予定である。)②  新株予約権の権利行使価格は,時価の 30~60%程度で設定する。(ディカウント発行にして,新株予約権に経済的価値を与えることで,株主の権利行使に関するインセンティブをもたせることができる。)③  新株予約権の権利行使期間は2ケ月以内とし,取引所における上場を可能とする。(株主は権利行使に代えて,市場で新株予約権を売却できる。)このような条件で,新株予約権を会社が株主に割り当てられると,次のような事態が生じる。 まず,大幅なディスカウント発行による増資となるため,株価は権利落ちをする。例えば,時価500円の株1株に300円で1株を取得できる新株予約権1個を割当てると,権利落ち後の理論株価は400円になる。(500 + 300×1)÷ 2 = 400  円 また,新株予約権の理論価格は100円になる。(400-300)× 1 = 100円そこで,株主は自らの持分比率を維持したい場合には,300円で権利行使をして1株分を買い増すことになる。また,追加資金に余裕がない場合は,割り当てられた新株予約権の一部を市場で売却してそのお金で権利行使するか,もしくは全部売却して権利落ち分を埋め合わせることが考えられる。http://www.jlea.jp/ZR10-003.pdf5.5 日本型Rights Issueの課題本稿で論じた日本型Rights Issueは,現在の上場企業の主たる増資手法である時価発行増資に比べて幾つかの点で大きなメリットがあり,また過去に実施された株主割当による新株発行スキームに比べても欠陥が少ないものと評価できる。そのため,今後の上場企業の資金調達手段として活用されることが十分期待できるが,この手法を取り入れるにあたって留意すべき課題も残されている。第一に,権利落ちに伴う株価形成の問題が指摘できる。Rights Issueでは市場株価よりも大幅に安い権利行使価格が設定されるため,理論株式は権利落ちによって下落する。しかし,配当落ちや株式分割の場合と異なり,新株予約権の株主割当の場合,実際に権利行使されて発行される株数が確定するまで,真の権利落ち後の株価は定まらない。そのため,過去買収防衛策の発動により新株予約権が付与されたケースでは,権利落ちが株価形成に十分に反映されないという問題が生じている34。もっとも,東証の『呼値の値幅制限に関する規則』別表「基準値段算出に関する表」1(4)によれば,割当てられる新株予約権が上場される場合には,権利落ちの基準値段を提示することとされているため,日本版Rights Issueではこの問題は一応クリアされる。しかし,権利落ちの基準値段が示されても,それらの情報が事前に市場参加者に認知されなければ,権利落ち日の株価は合理的に形成されない。日本版Rights Issueの第一号ともいうべきタカラレーベンのケースでは,権利落ち日の理論株価(389.5円)に対して権利落ち日の寄り付き株価は381円と権利落ちを十分に反映した株価となったが,日中の高値は450円まであり,終値は440円と理論株価よりも13%も高い値段で引けている。これは,同日に売買をした投資家の間で権利落ち後の理論株価に関する理解が十分浸透していなかったからだと推測される。そこで,会社は権利落ちに関する情報や権利落ちが生じるメカニズムについて株主や市場参加者に十分知らしめる工夫が必要と考えられる。第二に,市場での新株予約権の流動性と価格形成の問題があげられる。新株予約権は取引所のルールにより,行使期間が2ケ月以内であれば原則上場可能となる。日本版Rights Issueを成功させるためには,上場期間内において新株予約権の流動性を十分に確保しつつ合理的な価格形成がなされる必要がある。多くの個人投資家は,新株予約権の価格形成について十分な知識や情報を有していないと考えられる。そこで,会社はHPなどで,普通株式の価格から新株予約権の理論価値を容易に算出できるような情報を掲載するなどして,株主・投資家に周知する必要がある。タカラレーベンのケースでは,新株予約権の市場価格は終値ベースでみて,理論価格よりも相当程度のディスカウントでの取引が24営業日連続して続いた35。権利落ち株価と同様に新株予約権の理論価格についても,株主や投資家に十分な説明がなされていなかったことが原因と考えられる。また,発行体の幹事証券においても,市場での価格形成が合理的に働くよう,営業部門やディーリング部門においてマーケットメイクなどに積極的に取り組むことが期待される。第三に,端株が生じることによる小口株主への配慮が問題となる。たとえば,1単元1,000株の普通株式1株に対して0.5株購入できる新株予約権を1個割当てた場合,2,000株単位で保有する株主以外には,端株が生じてしまう。そうすると,新株を割り当てられた株主が端株を売却するには,信託銀行を通じて資金化することになる。また新株予約権の売買単位が現株式の取引単位と同じ場合は,1,000個の新株予約権を購入した投資家は権利行使によって500株の普通株を取得することになり,やはり市場で売却することができなくなってしまう。 そこで考えられる打開策としては,新株予約権の権利確定日に合わせて現株式の分割をして,端株が生じないようにすることが考えられる。つまり1:0.5の割当ての場合は,1株を2株に分割すれば,1,000株が2,000株となり,割当てられる株式は1,000株になり,端株は生じないことになる。なお,売買単位を引き下げることでもこの問題は解決できる。第四に失権株主への配慮をどうするかという点があげられる。タカラレーベンの事例は,いわゆるノンコミットメント型といわれ,権利行使期日までに権利行使されなかった新株予約権は失権する。その結果,失権新株予約権の保有者は,新株予約権の価値または権利落ち分相当の経済的な不利益を被ることになる。そこで,これらの失権者への救済をいかに図るべきか,という点が問題となる。 解決策としては,英国のようにアンダーライターが失権分の株式を引受けることにより,新株予約権の価値相当の金銭を失権者に還元することが考えられる。しかしながら,わが国の現行法の下では,アンダーライターが失権した新株予約権を失権者から強制的に買取る契約を予め締結することは困難と考えられ,何らかの新たな法的な手当てが必要となる。そこで,考えられる代替策としては,予め取得条項付新株予約権を付与して,会社が新株予約権の上場廃止後または権利行使期間終了後の一定期日において新株予約権を現金か株式で買い取る方法が考えられる。しかしこの方法によれば,失権分が多いと,会社の資金調達額が予定額を下回る可能性があるし,会社が現金で買取る場合は,せっかく資金調達した資金が流出してしまう。そこで,新株予約権の失権分相当の株式を,アンダーライターに時価発行して,その払込金銭を使って失権株主から新株予約権を現金で買取ることが考えられる。しかしこれは株主割当と第三者割当を複合した形態になり,手続きが煩雑で,かつ資金調達が二段階になることから,時間がかかるというデメリットがある。 第五に海外投資家に対する法律上の問題があげられる36。まず米国法においては,対価の支払を伴わない株主割当増資は、証券法上の登録義務は適用されない。しかしながら,かかる権利が行使された際には「販売」があったものと取り扱われ,登録義務の免除が受けられる場合を除き,米国における有価証券の販売は,いかなるものであっても,証券法に基づく登録が必要とされている。登録義務免除としては,登録免除規定第4条第2号が機関投資家の権利行使を,証券法ルール801が米国株主の保有比率の10%以下の場合を規定しているが,実務上のルール解釈は複雑であり,登録免除を受ける場合でも,英文開示情報を米国の電子開示(EDGAR)システムを通じてフォームCBにより米国証券取引委員会(SEC)に提出することが要求される。 また,EU法によれば,株主割当増資は通常公募とみなされ,EUでの目論見書が必要になる。しかし,新株予約権の無償割当は「公募」に該当しないという理解も可能であり,新株予約権の割当がEU域内で機関投資家に限定されている場合は,目論見書の適用免除要件に該当すると考える余地がある。このように,日本版Rights Issueを行う場合,株主の中に外国人投資家がいる場合には,それぞれの国の法令に注意を払う必要がある。煩雑な届出手続きを回避するため,外国人投資家による新株予約権の権利行使を避ける必要がある場合には,市場での新株予約権の売却を促すなど,外国人株主への適切な情報開示に努める必要がある。http://www.jlea.jp/ZR10-003.pdfライツ・イシューによれば、株主の新株予約権売却による利益確保と、高い確度での資本調達の実現など、株主割当増資で生じる問題を回避しすることができるわけです。日本では、先日4月1日、㈱タカラレーベンが、ライツ・イシューの第1号として、新株予約権を東証上場しました。市場の整備によって、既存株主が新株予約権を売却することによって不利益を回収することが可能となったのです。しかし、増資発表後の株価は、20%ほど下落しているようで、市場では、まだまだ希薄化の不利益の方がクローズアップされているようです。今度の動向に注視したいと思っています。http://ameblo.jp/st-cpa/theme-10021050211.htmlhttp://www.leben.co.jp/corp_ir/ir/lib/pdf/yuuhou_1403.pdf
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