jojuさんのブログ
★書評『それをお金で買いますか』(M.J.サンデル)
ハーバード白熱教室のサンデル教授の新刊。
内容は、市場主義批判。
市場主義の強欲が大不況を起こした。
我々は市場主義について見直すべきである。
市場主義で公平性が損なわれる。格差が拡大する。
市場取引にそぐわないものもある。
何でも貨幣換算するのは如何なものか?
お金で買うべきでないものまで買われるのは、本来、価格付けすべきでないものへの価格付け。
これは一種の『腐敗』である。 非市場的価値があるものに無理矢理、市場価格を付けているから。
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当方の感想(反論)
●市場原理は強欲で動くか? 市場原理を見直せるか? 大不況を無くせるか?
市場原理は強欲で動いていない。
買い手と売り手、双方が納得することで、取引は成立する。
一方的強欲は市場では通らない(取引不成立)。
市場原理を動かすものは、強欲でなく、公正さ。
市場原理は、取引において、あまねく働く原理。
貨幣経済でなくとも、人間が集団を造り、取引すれば、なにがしかの市場原理が働く。
その根源は、取引において、一方的な損をしたくないという防衛本能、得をしたい攻撃本能。
本能由来なので、人間集団が出来れば、そこに必ず市場原理が作用する。
それは制度でなく、一種の自然法則。
本能を破壊し、人間集団を破壊しないと、その作用は止まらない。
市場原理は、(社会主義のように)制度的、政治的にそれを見えなく出来ても、その作用は無くならない。
結局、人間は市場原理を見直すことなど出来ない。
また、大不況は強欲さによって起きたのでなく、集団心理で揺らぐ取引価格(市場原理の揺らぎ=バブル)によって起きた。
大不況も人間心理の特性(集団的ハイテンション=バブル、ローテンション=デフレ)に起因するので、市場原理同様、無くせない。
金融政策など政策ミスと、集団ハイが重なると、100年に一度くらいの確率で大不況は起きる。
●市場原理で格差拡大となるか? 公平は必要か?
市場取引では、公正さが保たれるゆえ、価値あるものと、価値の低いものに差がつく。
ゆえに公平にはならない。
不公正な平等・公平と、公正な格差とどちらが正しいか、と言えば後者である。
公正な格差は、一方的、持続的に拡大しない。努力次第で格差縮小や逆転が起きる。
今、米国で起きている格差拡大、階級的格差は、市場原理で起きているのでなく、市場原理が不公正な制度(富裕層優遇税制、経営者への異常高額報酬など)で歪められているから起きている。
●市場にそぐわない取引はあるか?
市場取引にそぐわない取引=犯罪的取引は、市場全体のごく僅か(0.0001%以下?)
ごく僅かの不可解な取引ばかり列挙して、市場主義は見直すべき、という論理展開は極論。
市場原理の見直し=封殺によって起きることは、市場管理の増大、非市場経由の取引の増大、、、つまりは官製経済の肥大化=社会主義化。
これは自由喪失への道。 市場原理(公正原理)を通さない取引増大ゆえ、社会全体が不公正化する道(お役所の悪事はチェック困難)。 まじめに働くのが馬鹿を見まくるので、経済低迷、国民益喪失(お役所は特権階級化)への道。
●貨幣換算は悪か? 非市場的価値は認められるか?
貨幣、お金は、製品提供、サービス提供で得られるものであり、労働の結晶。
労働が汚いものでないのと同様、お金は汚いものではない。
貨幣換算が腐敗ならば、労働行為も腐敗ということになる。 貨幣換算=労働換算でもあるから。
貨幣換算=労働換算ゆえ、非市場的価値のあるものなどない。 愛情もサービスの総和である。
非市場的価値=値段を付けられないくらい高額、、ということは、たかる人間、ゆする人間にとっては都合の良い方便になる。
例えば、環境はお金に換えられない、、、だから、環境保全にはいくらでもお金(税金)をつぎこむべき、という主張に転嫁される。 エコ利権でたかる人間にとっては都合が良い概念、、それが非市場的価値。
全体にサンデル教授の論理は、経済への理解不足ゆえ、おかしなものになっており、左翼など官製経済肥大化を望む方々、利権を誤魔化したい方々に利用されやすいものになっている。
NHK(左翼的であり、お役所でもある)が大々的に宣伝するのもむべなるかな。
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評価★一つ(5点満点)。 専門外に突っ込みすぎてマイナス的ですが、著書の善意は信じたいので★一つは進呈。
ま、往々にして、思慮の足りない善意が、社会主義や官僚統制の出発点なのですが、、、(--;
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