大手ドラッグストアが買い物客への値引きサービスとして行っているポイント付与が、10月から処方薬販売に限って禁止されることになり、ドラッグストア業界は反発、訴訟を検討するなどしている。厚生労働省がいったん容認しながら、中小薬局に配慮して方針転換した「朝令暮改」が混乱の元だ。
「なんでいまさら」。日本チェーンドラッグストア協会の宗像守むなかた・まもる事務総長は怒りが収まらない。
処方薬には厚労省による公定価格があり、患者が薬局窓口で支払う1~3割の自己負担分からの値引きは健康保険法が禁じている。このため2010年9月ごろ、協会がポイント付与の是非を聞いたところ、厚労省は「禁止規定はない」と回答したという。が、昨年11月に一転「値引きに近い」と禁止方針を決めた。
ドラッグストア業界は、いったん容認されたのを受け、処方薬を売った際にポイント付与するものの「値引き」にならないよう処方薬購入にはポイント使用を認めず、一般の商品などに交換してもらうルールを普及させていた。法律に触れない範囲で、消費者へのサービスを競い合うためだ。
だが、ドラッグストアの攻勢に気をもむ中小薬局中心の日本薬剤師会が「正確な調剤と安全のための適切な服薬指導が本来業務。処方薬への経済的付加価値は保険医療になじまない」(山本信夫やまもと・のぶお前副会長)とポイント付与に異を唱えた。
厚労相の諮問機関でも問題視され、厚労省は「処方薬にポイントが付くという理由で患者が薬局を選ぶこと自体、望ましくない」と方針転換。今年3月、省令改正し10月からの禁止を決めた。
ただ、クレジットカードで処方薬を買った場合に付くポイントサービスは「患者の利便性を優先した」(厚労省担当者)として禁止されない。こんな「不公平感」もあってドラッグストア業界は、約63万人分の署名を集めるなど反対運動を展開。約20社は制度継続を求め訴訟も検討している。
森永卓郎もりなが・たくろう独協大教授は「突然禁止は横暴。競争は必要で、小さな薬局、ドラッグストアのいずれを選ぶかは消費者が判断する。ポイントが原因で薬局がつぶれるとは思えない」と話している。