12/03/12 17:20
旭化成 <3407.T> は12日、米医療機器メーカーのゾール・メディカル <ZOLL.O> (マサチューセッツ州)を22億1000万ドル(約1800億円)で買収すると発表した。同社としては過去最大の買収となる。米国の救命救急機器分野で強い基盤と実績を持つゾールの買収により、中期経営計画で次世代の中核事業と位置付けた医療事業の強化を加速する。
会見した旭化成の藤原健嗣社長は「圧倒的に大きい米国医療機器市場で強いプレゼンスを持つゾールを買収し、救命救急という新しいビジネスのプラットフォームを手に入れる。確実にこの成長分野の拡大を進めていきたい」と述べた。旭化成によると、世界の救命救急機器市場は480億ドル規模で約半分を米国が占め、年率7%の成長が見込まれている。
ゾールは、生命蘇生技術をコアテクノロジーとした会社で、米国の体外除細動器市場では強固な事業基盤を保有している。また着用式除細動器「ライフベスト」など成長力のある製品を複数持っており、2011年度の売上高は5億2370万ドル、営業利益は4820万ドルだった。旭化成は昨年8月からゾールのAED(自動体外式除細動器)を日本で販売するなど協力関係にあった。 ゾールは現在、北米を中心に事業を展開しているが、アジアや欧州への拡大を進めている。旭化成も既存の医薬や医療機器事業でアジア展開を加速する方針で、ともにアジアでのプレゼンスを強化し、旭化成グループとして「医療事業全体のパイを大きくしていく」(吉田安幸専務)考え。 旭化成は昨年、中期経営計画「For Tomorrow 2015」をスタートさせたが、そのなかで医療関係分野を次世代の中核事業領域と位置付けた。藤原社長は、新規分野としてグローバルに成長が見込める救命救急領域への参入機会を模索するなかで、この領域に特化しているゾールが買収ターゲットになったと説明した。中計では2011─15年度の5年間で1兆円を投資し、売上高を2011年3月期の約1.6兆円から2016年3月期に2兆円に拡大する目標。投資額のうち5500億円は既存事業の成長に充て、残り4500億円を買収など新規事業への投資に充てる方針。今回の買収は新規事業投資の一環となる。 藤原社長は今回の買収を終えても「まだまだ資金はあるので、中計で掲げた拡大に向かい資金を使い、次の旭化成を作っていきたい」と述べた。
<調達資金は借り入れで賄う、増資は考えず>
旭化成は1株93ドルでゾール株すべてを公開買い付け(TOB)する。10営業日以内に買い付けを始め、開始から最短20日営業日で終了する。ゾールの発行済み株式総数の3分の2以上の応募があった場合に、買い付けを行う。ゾールの取締役会はTOBに賛同しているという。藤原社長はゾールの経営手腕を高く評価しており、買収後も現経営陣が継続することを希望していると述べた。 買い付け価格は3月9日までの30営業日終値の平均株価に対し約30%のプレミアムを乗せたもので、将来のリターンなどを考慮すれば「妥当な価格」(藤原孝二専務)という。旭化成のフィナンシャル・アドバイザー(FA)はUBS、ゾールのFAはブラウン・ブラザーズ・ハリマン。 買収資金は外部の金融機関から借り入れで賄う方針で「増資は考えていない」(藤原専務)。まずUBSを通じて短期のブリッジローンを組み、その後、長期資金に切り替える予定。
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