岩波書店が、こっそり縁故採用していたのではなく、堂々と募集条件に謳っていたため、話題になっている。フェアではないという批判的な論調が多い。
確かに、大企業が縁故採用を条件として、特別な関係者にしか門を開かなくなると、日本社会における機会均等や公平性が損なわれ、大きな問題である。
ところで、小さな会社や店舗が縁故採用をしても、ある意味、それは当り前で文句も言われないだろう。一定以上の大きな会社がやると問題になる。
そこで、岩波書店は大きな会社か、そうでもない会社かというと、年間採用が数人とのことで、採用規模だけでいうと、その辺にある中小企業と変わらない。しかし、人気の高さや、社会的な存在感においてはビッグである。だから批判される。
ところで、一定規模以上の企業は縁故採用禁止という法律ができたとする。すると、面白い現象が起きる。創業家の御曹司が入社しようとしても、縁故で入ってはいけない。きちんと入社試験を受け、公正に試験を受けて入らないといけない。理論的には、いくら創業家の御曹司でも落ちる場合がある。まあ、実際には落とさないだろうが。
縁故採用だけの会社は閉鎖的な体質になっていく可能性がある。一方では、共同体意識の強い結束力のある会社になる可能性もある。
もともと、私企業の社員採用などは、企業の自由だったはずだが、男女雇用機会均等法や障害者雇用の促進など、国の規制や干渉が強まっている。
国は、岩波書店の採用について調査するとのことだが、果たしてどんな結論にするのだろう。
採用条件に書いたことが問題なのか、事実上の縁故採用でも問題とするのか。事実上の縁故採用が問題なら、それは企業規模との関連においてなのか、社会の全てにおいてなのか。
岩波書店は厄介な問題を提起したものだ。厚生労働省は困るだろうな。法的な規制の問題としてではなく、企業の社会的責任や良識の問題として、要請・要望・見解の形になるのかな。