大企業が液晶など撤退しているが、その分需要が増すと言うものです。
*液晶テレビ事業と4―12月期の特損について追加しました。 [東京/大阪 1日 ロイター] シャープ <6753.T> は1日、2012年3月期の連結当期純損益が2900億円の赤字に転落すると発表した。従来予想は60億円の黒字だった。最終赤字幅はリーマン・ショック後の09年3月期の1258億円を上回って過去最大。世界的な薄型テレビの需要低迷で液晶パネルの採算が悪化したほか、自社の液晶テレビの販売も低迷。液晶テレビ・液晶パネル・太陽電池の主要3事業がすべて赤字になる見通し。 連結売上高は従来の2兆8000億円から前年比15.6%減の2兆5500億円に、営業損益はゼロ(従来予想は850億円の黒字)に、それぞれ下方修正した。営業損益予想は、トムソン・ロイター・エスティメーツによるアナリスト18人の予測平均669億円を大幅に下回る。
<液晶・テレビが赤字転落、太陽電池は赤字拡大> 世界的な液晶テレビの需要低迷から、大型液晶パネルを製造する堺工場(大阪府堺市)の外販が減少。さらに国内市場の液晶テレビの需要も低下しているため亀山第2工場の操業も昨年12月から落としている。需要低迷で堺工場は1―3月期から生産調整を実施し、稼働率を50%程度まで落とす。これにより通期の液晶パネル事業の営業損益は190億円の赤字(従来予想は330億円の黒字)に転落する。 記者会見した片山幹雄社長によると、同社の液晶パネルの外販比率は従来まで3割程度としていたが「需要低迷で今や1割程度まで落ち込んでいる」という。また、稼働率を半分まで落とすのは来期の上期いっぱいを想定しているが「状況をみて稼働率を高めていく」(野村勝明常務執行役員)としている。堺工場で稼働を落とした分は、需要の拡大しているスマートフォン用の中小型パネル製造の技術導入を検討する。 さらに、自社の液晶テレビ「アクオス」も、国内需要の急減や中国市場の消費鈍化のほか、競争激化による単価ダウンで販売台数と売上金額とも従来予想を下回る。通期の液晶テレビの販売台数は従来計画の1350万台から1280万台に下方修正した。通期の液晶テレビの売上高見通しも従来予想の6400億円から6000億円に下方修正。同事業の営業損益は従来まで黒字を見込んでいたが、販売台数の低下と単価下落で通期で赤字に陥る見通し。 太陽電池事業も、欧州での金融不安や価格下落で海外販売が減少するほか、国内でも中国メーカーなどとの競争激化で事業環境が悪化しており、通期の売上高は従来計画の2400億円から2000億円に、販売量の計画も従来の1350メガワットから1100メガワットに、それぞれ下方修正した。同事業の営業損益は従来計画の160億円の赤字が240億円の赤字に拡大する。 このほか、税制改正による法人実効税率引き下げと業績悪化を受けて繰り延べ税金資産を取り崩すことも、当期純損益の赤字が膨らむ要因となった。また、未定としていた期末配当予想は5円(前期実績7円)、同じく未定としていた年間配当予想は10円(前年実績17円)とした。 <4―12月期の特損は790億円>
11年4─12月期の連結業績は、売上高が前年同期比18.3%減の1兆9036億円、営業利益は同86.3%減の91億円となった。液晶テレビ、太陽電池などの大幅な価格下落と、急激な円高が響いた。
大阪市内で会見した安達俊雄副社長は液晶テレビの国内市場動向について、例年、春から年末にかけて販売台数が増加するのに対し、11年は四半期ごとに減少したと指摘。「今まで全くなかったパターン。数量的にも単価的にも急激に下落した」と述べた。
4―12月期の当期純損益は2135億円の赤字(前年同期は218億円の黒字)。特別損失は、4―5月の堺工場の稼働停止に伴う操業損、液晶工場の中小型化に向けた構造改革費用、訴訟の和解金を含めて790億円。また、税法改正と業績悪化による繰り延べ税金資産の取り崩しは1198億円だった。
ベイビュー・アセット・マネジメント執行役員の佐久間康郎氏は「驚くくらい大きい赤字額」と指摘。マネックス証券のチーフ・ストラテジスト、広木隆氏は「赤字転落は報道済みだったが、赤字額が想定以上に大きい印象。市場コンセンサスは150億円程度の赤字であり、株価に対するネガティブインパクトは強い」と指摘している。
(ロイターニュース 村井令二 長田善行 取材協力 久保田洋子 杉山容俊;編集 石田仁志) ※(reiji.murai@thomsonreuters.com; 03-6441-1823; ロイターメッセージング:reiji.murai.reuters.com@reuters.net) ※記事中の企業の関連情報は、各コードをダブルクリックしてご覧ください。