(昨日からの続き)
株価のサイクルは、底値期、上昇期、天井期、下降期となりますが、生涯投資法では、1サイクルでの資本の増減を目標にしています。資本が、天井期には底値期から2倍、下降期ではその7割程度の減少に留めるようにすれば、億万長者への道に繋がります。
そのため、底値期で次のサイクルに合わせた銘柄選定を済ませ、上昇期以降は、選定した銘柄だけでポートフォリオを組むようにしています。デフレ下では、平均の谷が前回の谷よりも下回ることも考えると、底値期に選定する銘柄が、億万長者への道を達成できるかの鍵を握ることになります。
底値期: 次の相場に向けた準備期間としてこの時期に銘柄の入れ替えをします。新規銘柄の購入、 株数、時期は、売却する株の種類、金額に合わせて決めます。
上昇期: 現物株の売買は銘柄の入れ替えのみですが、値動きが出てきた所有株は、信用取引を使って買い増します。6ヶ月の期日前までに、売却して利確または損切りするか、現引きしてポートフォリオに組み入れるかを決めます。
天井期: 基本的には上昇期と変わりませんが、ポートフォリオの銘柄数を絞り込んでゆきます。
下降期: 信用取引はやめ、所有している銘柄の収益力に注視しながら様子を見ます。減配、無配企業は、ポートフォリオからはずしてゆきます。
現在は、底値期と見て銘柄の入れ替えを終わったところです。いつの場合でも所有している銘柄数は10以下にしていますので、ポートフォリオを組み替える場合でも、新規銘柄はせいぜい3銘柄程度です。つまり、10のうち3銘柄程度で、全銘柄の入れ替えはまずありません。一度購入した銘柄は、頻繁に売り買いしません。そのため、底値期の売買は年間10回程度にまで減少します。
それでは、具体的な買いのタイミングは・・・。生涯投資法では、銘柄の選定は底値期に済ませていますので、新銘柄買いは底値期にして、上昇期、天井期には、所有株を買い増します。売買を予定している銘柄の動きについては、すでに熟知しているわけですから、基本原則を決め、後はその場の状況に合わせて決めます。
基本の1は、「発注数量は株価に影響のない範囲で纏め、指値で」します。株数は分割発注しないで、手間と手数料を考えてできるだけ纏めます。注文板から、注文株数が株価に影響を与えそうなときは、分割して発注します。相場が動いているときには、指値を引け値より高く設定する「成り行き指値」を用いるなど柔軟に対応します。
基本の2は、「落ちるナイフは掴まない」です。銘柄選定の際には、買い値の範囲は当然決めているはずですが、買い値の範囲を超えた場合には見送り、下がるのを待って、できるだけ安値で買うように努力します。この際、最安値で買おうとして、落ちるナイフを掴んではいけません。必ず下げ止まったことを確認してから買うようにします。
基本の3は、「買い時の判断はチャートでする」ことです。銘柄の選定はファンダメンタルを用いましたが、買う場合には、チャートを使ってその銘柄の過去の足取り、株価の位置などを確認したうえで、安値から少しうえをねらい目とします。決して機械的に、PBRが1倍の株価で買うというようなことをしません。
基本の4は、「決算発表にあわせて買う」ことです。PER,配当利回り、PBRは、株価の動きで日々変わります。ということは、株価の選定基準は、毎日変わっているのです。ただ最も大きく変化するのは、3月期決算会社の四半期決算発表が集中する、1、4、7、10月といえます。決算発表日前後は、決算内容に不安を感じている機関投資家などが、売買を控えるため、指数は谷を作ります。そのため、いい決算を発表した会社まで、全体に引きずられて下げてしまいます。ここが買い時になります。
それでは、最近話題の銘柄を例にして、銘柄の選定と売買の時期をチェックしましょう。
① 東京電力
安定した収益と配当で、長期投資家に絶対の信頼のあった銘柄だったのですが、原発の事故以来、投資価値は激変しました。私の投資基準からして、東京電力はポートフォリオにはありません。仮に持っていたとしたら、3月11日からの暴落で最初の突っ込みから、1,000円程度にまで戻ったところで全株売却しています。
② オリンパス
高成長、高配当のハイテク企業として人気の企業ですが、バブル時の負債隠しが発覚して2,500円台から400円台まで一気に急落しました。この銘柄は、銘柄選定基準にもファンダメンタルも問題なく、ポートフォリオに組み込まれていてもおかしくありません。ただ、事件前の配当利回りが1%そこそこだったので、事件前に売却していたはずです。仮に持っていたとしたら、最初の急落で1,000円台に落ちこんだときに、ファンダメンタルの異変を感じて売却していたでしょう。その後400円台で新規買いを入れることは考えませんでした。
③ ソニー
日本の代表的な海外展開企業として、ファンダメンタルの点では問題ありません。ただ選定基準から外れているため、現在の安値水準でも買うことはないでしょう。
2000年初頭のITバブル時、この業界は夢の産業としてもてはやされ、代表的なソフトバンク、光通信は、今でも語り継がれるほどの株価をつけました。当時の夢が実現されてみると、いいところは皆韓国、台湾、中国に持っていかれ、輸出産業としてのITは、部品、素材にわずかに希望を残すだけの惨めな状態です。
そんなことから、円高の影響を最も受ける産業としてのIT関連は、選定基準からはずしています。パナソニックもシャープも同じですが、同じ電気に属する日立、東芝は、社会インフラで高い技術と生産設備を持っていますので、この産業は問題ありません。
どんな場合でも、いい株を割安なときに買うことが、いい株をタイミングよく買う方法に繋がります。さらに付け加えるならば、ツいているときに買うようにしましょう。最後は運に任せるより仕方がありません。先が分かれば、みな百万長者になっています。