【コラム】市場混乱はドル上昇の合図、苦境ではドルが最善の投資先に
マーケットウォッチ
【ニュートン(米マサチューセッツ州)】米国の所得と経済は何カ月もの間、加速的に成長してきたが、今後半年間はどちらも減速しそうだ。
その結果、人気がない米ドルや、平凡な債券ファンドが、ほんの数カ月前に予想された以上のパフォーマンスを見せても、おかしくはない。以前は強気の波に乗りたかったが、今はそこから抜け出したいと考えている。
単純に6月には売ればいい、と勧めているわけではないし、元気いっぱいの暴れ馬に乗るような投資スタンスを除外しているのでもない。多くの危険な紆余(うよ)曲折に、ぞっとするような急上昇と急降下が多少あるような投資のことだ。その代わりに、私は、短期的なリスクを抑制する手段を模索しながら、長期的な投資手段と達成可能な目標にも注意を払っている。
何カ月か先に厳しい状況になる可能性もあるが、経済成長が減速から停止に転じることを示す証拠は、ファンダメンタルズ面では一切見当たらない。
6月の不安要因に変化はない。月末に予定されている米連邦準備理事会(FRB)による量的金融緩和プログラム終了を市場が織り込むなかで、ユーロ圏の懸念が市場に脆弱性をもたらしている。
また、利益確定には、すぐに流行り、なかなか治らない風邪のような厄介な傾向がある。売り要因となる確かな証拠が得られた場合は、しばらくは逆風に耐えなくてはならないだろう。それは不快なほど長い期間になるかもしれない。
挫折する可能性が最も高いのは誰だろうか。まずは金投資家(gold bugs)だ。ほんの一相場前には強気の流れに乗っていた彼らだが、今は、流れの下に潜ってしまった理由を考えている。それに近いのが石油投資家(oil bugs)かもしれない。どちらの投資家も、儲けている時にも親切ではないが、損を出している時の金投資家に遭うのはご免願いたい。
戦略を組み合わせる
こうした荒波の中で、トレーダーにお勧めする6月の投資スタンスは、戦略を組み合わせることだ。2頭馬車にしても、速度はそれほど上がらないが、1頭が疲れ果てて動かなくなっても、家に帰れる(目標達成の)確率はまだ50%残っている。
まずは、超大型株が良い。巨額のバランスシートと配当、使い切れないくらいの多額の現金と、新興市場にアクセスを持っている。「アメリカ」というブランドは、過去10年間の世界的混乱の後でも色あせていないし、むしろステータスがますます高まったと確信している。特に劇的に成長している新興国市場の消費者にその傾向が強い。
ここ米国では、自分の自動車を自慢するためには、ボンネットに「メルセデス・ベンツ」のエンブレムが必要だと思われている。新興国では、テーブルの上のコーラとビッグ・マックが同じ役割を果たす。商品価格が低下すれば、これらの企業の業績もようやく急上昇するかもしれない。
広い範囲をカバーするために、私ならば、全ての銘柄の中で最もシンプルな、ステート・ストリート運用の「SPDRダウ・ダイアモンズ(DIA)」を選択する。IBM(構成比率10%)、キャタピラー(7%)、シェブロン(7%)、スリーエム(6%)、ユナイテッド・テクノロジーズ(5%)が、DIAの35%を構成するトップ5の企業だ。トップ10には、エクソン、マクドナルド、ボーイング、コカコーラ、プロクター・アンド・ギャンブルも入っており、トップ10がDIAの55%以上を構成している。
大企業銘柄の組み合わせで私が好きなのは、経験豊富な大型株志向のマット・ロルハン氏が運用する「フィデリティ・メガ・キャップ・ストック」だ。同氏がこのファンドの運用を引き継いだのは比較的最近(2009年4月)だが、同氏は、(2005年5月から手掛けている)長年の「フィデリティ・ラージ・キャップ・ストック」の運用で好成績を残している。
フルハン氏は、フィデリティ・メガ・キャップ・ストックのエネルギー関連株比率を低く、生活必需品関連株の比率を高くした。生活必需品関連株の構成比率をここまで高くしたのは初めてのことだが、短期的な石油の見通しを弱気としたのは初めてではない。また、テクノロジー関連株が、公共事業や、ほぼ同じことを意味する電気通信関連株に勝っている。同氏は、例えば、携帯電話事業者ベライゾンが多機能携帯電話(スマートフォン)「アイフォーン(iPhone)」を販売できることを評価するよりも、アップルの株を保有する方を好む。また、同氏は金融セクターに大胆で素早い投資をしている。
ドルに乗る
市場が荒れている時は、米ドル以上に素晴らしい投資先はない。何と言われようが、テクニカル・チャートを見ると、ドル上昇の引き金となる最大の要素は、市場での「撃ち合い」で、お客(投資家)がみんなテーブルの下に隠れようとする時だ。私は長年のドル強気派で、そのことで何度も責められている。
ただし、米上場投資信託(ETF)大手パワーシェアーズの「ドル・ブル・ファンド」と、同じくETF運用会社のプロシェアーズの「ウルトラ・ショート・ユーロ」の組み合わせを私は好んでいる。前者がドル追随型の商品である一方、後者はユーロの価値に対して2倍の反比例関係にある。
6月の足取りをもう少し明るくするために、生活必需品関連銘柄とテクノロジー関連銘柄を組み合わせるのも良いだろう。ただし、その時は平均以上の功績を出している銘柄を選ぶべきだ。私ならば、積極経営に若干賭けて、「フィデリティー・セレクト・コンシューマー・ステープルズ」を買い、さらには「フィデリティー・セレクト・コンシューマー・ファイナンス」を通じて、消費のファイナンス面をうまく取り込む。
(執筆者のジム・ローウェル氏は、アドバイザー・インベストメンツ社のチーフ・インベストメント・ストラテジスト。マーケットウォッチの「ETFトレーダー」のエディターも努める)