内閣府と財務省は30日、首相官邸で開かれた社会保障改革の集中検討会議に、消費増税が経済に与える影響や実務上の問題点などを分析した報告書を提出した。内閣府は報告で「消費増税は必ずしも景気後退を招かない」などと指摘。両府省とも消費増税を段階的に行う必要があるとの認識で一致した。
内閣府は、ドイツが付加価値税率を引き上げた経験などを紹介し、消費増税が必ずしも景気後退を招かないと分析。日本で消費税を3%から5%に引き上げた1997年も、消費増税は「景気後退の主因ではない」との見解を示した。
そのうえで、財政状況が悪化している現状も踏まえ「経済成長の方向性などを重視し、景気が成熟する前の勢いのある時に、段階的に引き上げることが望ましい」とした。
低所得者ほど税負担が増す逆進性対策については、所得税などほかの税制や、社会保障制度、歳出見直しで十分対応が可能だとし、食料品への軽減税率の適用は効果が小さいという専門家の見方も紹介した。
財務省も軽減税率を取り入れた場合の実務上の対応などについて検証した。商品仕入れの段階で交わす請求書に消費税額を明示するインボイス(税額明記の伝票)の導入や、対象品目の線引きといった難しい作業があることから「単一税率による税制が望ましい」とした。内閣府同様、消費増税に関しては「経済への影響や事務負担に留意しつつ、段階的に引き上げる必要がある」と指摘した。
両府省は、ともに学識経験者らで構成する研究会などを設置、学術研究の成果や諸外国の事例などを参考にして、報告書を取りまとめた。〔日経QUICKニュース〕