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「厳しい舵取りを迫られるKDDI」 ④
モバイルWiMAX、進まざるを得ない免許取得の“辛さ”
次世代ワイヤレス通信網として、2.5GHZ帯の免許割り当てが注目されている。先頃行われた申請4社の公開ヒヤリングも、舌鋒鋭い孫氏の発言に他3社が何とか対処する構図は世間に分かりやすく、混沌とする割り当て発表の行方が興味深く見守られている。
孫氏の「ウィルコムは(周波数を返上した)IPモバイルの跡地へ」の言や、日経からの「次世代無線免許、KDDI陣営へ・ウィルコムも有力」報道の真偽はともかく、そもそも割り当て候補の周波数は、mobile WiMAXの運用には不都合な帯域(したがって当初から次世代PHSを念頭に置いていたと思われ、ウィルコムの当確が叫ばれている背景)と、mobile WiMAXに使って欲しい帯域の2つとなっており、mobile WiMAXでは1社の枠が規定路線と考えられる。
ここで「技術対応の先行性」を理由に必死に食い下がるKDDI陣営を尻目に、自らの正当性をある意味“正論”を持って主張し他陣営を“口撃”した孫氏は、公開ヒヤリング翌日にはNTT-アッカ連合との連携も視野に入れた発言をしている。孫ソフトバンクにとって、WiMAXのインフラ運用に興味があるわけではなく、WiMAXが使えることが全てなのである。
割り当てられる帯域から見て、WiMAXが採用されるのは1つの帯域のみ。とすれば、WiMAXネットワークが希望各社に解放されるのは必然であり、1キャリアが単独で免許申請することを許さなかった総務省の考え方に符合する。つまり、いずれのグループに免許がおりようとも、申請会社は構築したWiMAXネットワークというインフラを“持つだけ”の会社となり、その上での通信サービスは別の会社(これを既存モバイルキャリアがやってはいけないという規制はない)が行う図式となるのが普通の流れ。当然、既存のモバイルキャリアがある意味MVNOとしてWiMAXを使ってくれないと、WiMAXインフラ会社はたちどころに経営が滞ることになろう。
但し、モバイルキャリアには自社が持つ3G/3.5Gネットワークがあり、その先には4Gがある。運用に一定のコストがかかるネットワークから、ペイラインを度外視してまで自社トラフィックをWiMAXに移すインセンティブは働き得ない。そこには一種のカニバライゼーションが起こるのだ。WiMAXネットワークを維持しなければならないモチベーションも、利用するだけのキャリアには無いことになる。こういったロジカルな判断の帰結として、孫ソフトバンクの“提携路線”発言があったわけだ。
そもそもWiMAXはmobile用途ではなく、Fixed技術、あくまでもWiFiの延長線上の体系として開発、標準化されてきたものである。ある時点からIntelの思惑は増長し、mobile WiMAXが表に立ってきているが、3G標準入りにITU総会で反対を貫いた中国の姿勢を待たずして、mobile WiMAXは「シームレス切替に対応しておらず、現在の主要3G規格レベルに達していない。その上、その商用化の時機も熟しておらず、多くのコア技術に対する更なる論証と検証が必要」なままである。中国は独自のTD-SCDMAを3Gとして離陸させたい意向が強く働いている背景もあるが、同時にTDベースのWiMAX「McWill」も担いでいる。そこでは、WiMAX開発当初の基本線である固定系WiMAXとしての利用を念頭においており、中国側の姿勢にロジックの破綻は無い。
報道にある通り、KDDIグループがmobile WiMAXの免許を取得したら、他社はネットワークが使える状態になるまで様子見を決め込んでいればいい。「参加(インフラ投資に応分の支援)しないとネットワークを使わせない」という議論は、総務省が許すまい。「使った分だけ払います」と現在のNTT回線の“長期増分費用”方式の費用分担ともなれば、設備投資の回収が長期化するのは必至。果たして自らWiMAXネットワークの最大功労者(利用者)となることが求められるわけだ。
先の「cdmaネットワークをどうするか?」の解として、cdmaから「LTE」を見越したW-CDMAへの転向も1つのあり方だが、4Gも見据えた3G規格・WiMAXをネットワークに使うのも“逃げ道”ではある。ウィルコムの株主でもあるKDDIは、次世代PHSを持って橋頭堡のある中国を皮切りにアジアに逃げる手もウルトラCとしてあるにはある。こういった状況にあればこそ、“必死”になって免許取得に動くKDDIだが、どちらに転んでも“不確実性”(本当にキャリア網として使えるのか?)を伴った膨大な投資が必要な「いばらの道」であることには違いが無い。
ここまで述べてきたのは、あくまでも「事実」とそこから想起される「仮説」だ。「仮説」に過ぎないが、一つ一つの“トリガー”はいつ引かれてもおかしくない状況であることもまた確か。au/KDDIにとって“悪魔のシナリオ”が繰り広げられないとは誰も断言できないだろう。
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