現地時間14日夜、アメリカ中西部上空に火の玉のような流星が突然姿を現した。流星が目撃されたのは同日22時15分ごろ、ウィスコンシン州からアイオワ州、イリノイ州、ミズーリ州にかけての地域だ。暗闇に包まれていた辺り一帯が緑味を帯びた光に照らされ、半径数百キロの範囲に衝撃音が鳴り響いたという。
シカゴにあるアドラー・プラネタリウムの天文学者マーク・ハマーグレン氏は、撮影されたビデオ映像の分析から、流星の直径はおよそ1.8メートル、重さは450キロを超えると推定する。
同氏はこう話す。「光を放って上空を横切る流星体は、微小な物体の集まりだと思われがちだが必ずしもそうではない。今回は夜空を真昼のように明るく照らし、衝撃音も広範囲で聞こえたことから、かなり大きな物体と考えられる。日中だったら飛行機雲のような飛跡も見えたはずだ」。
緑味を帯びた光は、大気圏突入の際に発生した摩擦熱で内部の鉱物類と酸素が反応して燃焼したためという。だが、光の色だけでは成分特定が難しい。金属をガスバーナーの上にかざすと炎が金属元素特有の色で光る。単体の金属ならこの炎色反応で種類を判別できるが、流星体の組成はそれほど単純ではないという。
「高校の化学の授業を思い出して、緑味を帯びた光から銅を連想した人もいるかもしれないが実験と実際は違う」とハマーグレン氏は語った。
こと座流星群が夜空に軌跡を残す時期が近づいている。予想では、4月16日ごろから見え始め、4月22日に極大期(流星群のピーク)を迎える。同じタイミングで現れた今回の火の玉は流星群と何か関係がありそうだが、これもハマーグレン氏は単なる偶然だと話す。
流星群は通常、細かいちりなどが集まった彗星の尾の中を地球が通過する際の現象で、地球に落下する隕石とは無関係だという。ただし、同氏は氷河期に多数の生物種が絶滅した原因は流星群だという仮説を否定しているわけではない。
彗星の尾を形成する物質は、非常にもろくて小さいため、地球に降り注いでも通常は地上に到達する前に燃え尽きてしまうという。
今回目撃された流星は、太陽系内の小惑星帯から飛来した可能性が高いという。火星と木星の軌道の間に位置する小惑星帯には、微小な天体が無数に集まっている。
ハマーグレン氏によると、小惑星帯から地球へ流星体が時々飛来しており、その落下地点も地球全域に分布している。「地球表面の大部分は海が占めているため、流星体のほとんどは海へ落下する。しかも時間は関係ないので、昼間だとわからない場合が多い」。
レーダー画像から、大気圏に突入した流星はバラバラに分裂し、アメリカ東部のウィスコンシン州あたりに落下したとハマーグレン氏は考えている。「アメリカ北西部リビングストン(モンタナ州)上空を通過してそのまま南東方向に飛び去った」。
上空通過の途中で無数の破片に分解し、最後には地上に落下したとみられる。破片はフットボールほどの大きさで、今のところ負傷者はいないようだ。ハマーグレン氏によれば、「隕石を構成する物質は一般的な鉱物で、毒や放射能の危険はまったくない」という。ウィスコンシンを目指す隕石ハンターたちも、この宇宙からの贈り物を安心して手にできそうだ。
Anne Minard for National Geographic News
1.8メートルでこれだけ音がするんですから、100メートルの隕石でも凄い被害が起きるはずですね。