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日中間の物流ニッチ「エーアイティー(9381)」

小型株をウォッチしていて面白いのは、会社の規模自体が非常に小さくても、例えば非常にニッチな市場で圧倒的なトップ企業であったりとか、やはり「ダテ」に上場してないな、と思わせる会社が結構沢山あることです。

エーアイティー(9381、マザーズ)も、名前だけ聞けば、IT関連??てな感じで何の会社か全く判りませんし、時価総額も50億円切ってるし、多分投資家の中で知っている人はかなりの少数派だと思います。

この会社は実は物流企業です。自らは輸送手段を持たず、海運会社や航空会社から貨物スペース(コンテナ)を仕入れて国際間の輸送をコーディネートし、荷主から受け取る代金と海上・航空運賃の差額を収益とする商売です。

実際に輸送手段を持つ海運会社や航空会社を「キャリア」と称するのに対し、同社のようなビジネスは「フォワーダー(利用運送事業者)」と呼ばれます。

日本でフォワーダーといえば、通常は「航空」フォワーダーをイメージします。近鉄エクスプレス(9375)、郵船航空サービス(9370)が有名ですが、事業の大半は航空フォワーディングです。

対してエーアイティーの主力事業は「海上」フォワーディングで、特に日中間の航路にほぼ特化、しかも、通常、フォワーダーは「輸出」ビジネスが中心であるのに対し、同社は中国から日本への「輸入」貨物をメインに取り扱っています。

航空フォワーダー専業最大手の近鉄エクスプレスの年間売上高が2,000億円以上なのに対し、同社売上高は100億円にすぎません。それでも海上フォワーダーとしては、内外トランスライン(9384)と並ぶトップ企業で、その下は年商40-50億円以下のサイズとなってしまいます。

海上フォワーダーの規模が航空と比べてなぜこんなに小さいのかというと、航空は伝統的に旅客中心であることもあって、貨物の集荷はフォワーダーに大きく依存しているのに対し、海上は貨物が本業で、伝統的に海運会社自体が営業を行っているためフォワーダーの存在余地が小さいのです。

内外トランスが輸出中心でアジア以外に欧米向けも取り扱っているのに対し、エーアイティーは「日中航路」の「輸入」貨物取扱というニッチ市場で圧倒的な存在感を発揮しており、業績を見ても開示を始めた05/2期から直近の10/2期まで連続の増収増益を達成しています。リーマンショック?関係ないね、といった感じです。

日中航路には、実は日系海運会社はほとんど参入しておらず、外国海運会社が運航しているため、日本での営業力が弱いのでしょう。ここにエーアイティーの存在価値があるわけです。

前10/2期は、日中間のコンテナ本数が前年比8%減少したのに対し、エーティーアイの取扱本数は同11%増加しました。それでも市場シェアはまだ3.5%です。同社は3年後に年間取扱本数を現状の約2倍に当たる20万本へ拡大させる方針で、積極的に営業マンを増強する方針です。

11/2期会社業績計画は、売上高21%増の123億円に対し経常利益は0.5%の微増益(8.24億円)予想です。

これは、現在、海運会社が収益立て直しのための運賃値上げに取り組んでおり、これには中国政府のバックアップもあるようなので実現性を考慮せざるを得ないようです。

運賃上昇は売上高の増加要因ですが、当然、海運会社への支払い運賃が膨らみます。エーアイティーの荷主に対する料金値上げで完全に吸収するのは困難ということ。プラス、攻めの営業マン拡大政策で人件費が2.7億円も増加を見込んでいる(09/2期は1.6億円の増)、ことなどにより、利益横ばいを見込んでいるわけです。

ただ、会社としては予算はあくまで最低ラインとの認識で、上ぶれ余地は結構あるのかな、といった印象です。なにより、日中間のコンテナ船の稼働率(専門的には消席率といいます)は現在70%程度にすぎないとのことで、運賃値上げの実効性自体がやや疑問でもあります。

株価バリュエーションは昨日引値937円基準で、11/2期会社予想PER9.0倍、同予想ROE22.5%に対し予想PBR2.0倍で、今後の成長性なども考えるとかなり魅力的な水準と思われます。

ただ、やはり、超地味な業界、流動性の問題、などが実際の投資に当たってはネックなのかもしれません。
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