「株式持ち合い」解消加速 世界不況で強まるリスク2009/11/26
金融機関と企業や、企業同士の「株式持ち合い」が急速に縮小している。市場全体の株式に占める持ち合い株の比率は、金額で2007年度の9.0%から08年度は8.2%に低下し、株数でも7.1%から6.8%に下がった。持ち合い解消の背景には、株価の低迷や持ち合い情報の開示の義務化があり、今後、解消の動きは強まる見通しだ。
大和総研が、全上場企業を対象に株式持ち合いの状況を調べたところ、企業が銀行と株式を持ち合うケースは、1995年度には全企業の91.3%あったが、2005年度には55.8%、08年度は50.8%まで低下した。
企業同士で持ち合うケースも、1995年度の75.5%が2005年度には47.1%、08年度は43.8%に下がった。
大和総研資本市場調査部の伊藤正晴主任研究員は「ここ数年、買収防衛策や資本提携の一環として株を持ち合う動きも見られたが、全体的に減少傾向にある」と指摘する。
08年度の持ち合い率を産業別にみると、水産・農林、パルプ・紙などは持ち合いを続けている企業が全体の80%以上を占め、「歴史の古い産業ほど比率が高い」(伊藤氏)特徴が出ている。
反対に、通信、サービス、証券、商品先物取引業などは10~20%台にとどまった。
08年度に、企業同士で新たに株の持ち合いを始めたのは754件、計4518億円分あった。
金額が最も多いのは石油、石炭製品の766億円で、電機も452億円。石油は新日本石油と国際石油開発帝石、電機は東芝とキヤノン、ロームと日本電産などの持ち合い例があった。
逆に、持ち合い解消は新規持ち合いを大きく上回り、1294件、計1兆555億円にのぼった。輸送用機器(1471億円)が多く、トヨタとフタバ産業、ホンダとタカタなどが持ち合いをやめた。電機も1397億円、卸売も1052億円分の持ち合いが解消された。
株式持ち合いは、企業にとってお互いに長期安定株主を維持できるメリットがある。保有株の下落リスクを回避するため、大手銀行などが持ち合い解消の動きを強めた一方で、外資系投資ファンドによる日本企業の株買い占めでは、買収防衛策として同じ業界内の持ち合いが強化されるなどした。
しかし、昨秋以降の世界不況で、「他社株の保有のリスクが強まり」(伊藤氏)、持ち合い解消の動きが加速している。
金融庁も、上場企業が持ち合いをする場合に、残高や保有理由を開示させる方針を提示している。
早ければ10年3月期にも適用される見込みで、市場の評価も厳しくなることから、日本的な株式持ち合いは、徐々に姿を消していく可能性もある。(渡部一実)
2008年度決算において3メガバンクが巨額の赤字を計上した。その最も大きな原因が「株式持ち合い」等によって生じた投資有価証券の評価損だ。なんと、3メガバンクの評価損額の合計は約1兆3000億円にも上るという。
こうした動きを受けて金融庁は、今月6日、「株式持ち合い」の解消を促すために「持ち合い株に関する情報開示を義務化する」方針を明らかにした。早ければ2010年3月期の適用を目指すという。
「株式持ち合い」は、買収防衛策としても導入されることが多いといわれているが、評価損によって企業の価値を下げることにもなりかねない上、コーポレート・ガバナンスの形骸化も引き起こす。今回は、連載第50回でも取り上げた「株式持ち合い」の問題点を改めて洗い出し、金融庁による開示義務化の効果について検討していきたい。
シナジー効果を生まない
「株式持ち合い」の悪影響とは
先月、金融審議会は「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ報告」という分科会を行い、『上場企業等のコーポレート・ガバナンスの強化に向けて』という報告書を発表した。
この中では、資金調達や取締役会のあり方、独立社外取締役の義務付け、監査役の機能の強化など、コーポレート・ガバナンスの強化に向けての方向性が打ち出されており、その中のひとつとして「株式持ち合い状況についての開示の促進」も提言されている。
株式の持ち合いは、1990年代以降減少傾向にあった。ところが、2007年のスティールパートナーズによるブルドックソース買収と一連の事件以降、再び増加する。なぜなら、ブルドックソース事件以降、買収防衛策の決議で多数の株主の意思が重視される流れが強まり、企業が多くの株主を味方につけなければならない状況になってきたからだ。そこで、特に敵対的買収の脅威にさらされている企業同士が、必ずしも事業に関連性がなくとも株を相互保有し合うケースが増加してきた。この連載第50回でも取り上げた江崎グリコ、日清食品、東京放送(TBS)がその代表例である。
上がらない銘柄に持ち合い株からの売りはあるのかな?
新興にはこのような持合い株はないから考えなくてすむけど