株価サイクル⑥の局面 x 中東での地政学リスクの急騰=急落

優利加さん
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昨日の米国株式相場は高安まちまちとなった(DJIA +22.07 @37,775.38, NASDAQ -81.87 @15,601.50, S&P500 -11.09 @5,011.12)。ドル円為替レートは154円台前半での動きだった。本日の日本株全般は大きく下げた。東証プライムでは、上昇銘柄数が86に対して、下落銘柄数は1,554となった。騰落レシオは100.02%。東証プライムの売買代金は5兆4658億円。

TOPIX -51 @2,626
日経平均 -1,011円 @37,068円

米国では、米4月フィラデルフィア連銀業況指数が予想を上回り、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁などの米連邦準備制度理事会(FRB)高官が相次いでタカ派発言をした。これにより利下げ開始のタイミングはさらに遠のき、米10年債利回りは前日の4.58%台から4.63%台へ上昇した。その結果、S&P500とナスダックは5日連続で下落した。S&P500は昨年10月以来の長期続落記録となった。

本日の東京市場では、米ハイテク株安の流れを受けて半導体関連銘柄で売り優勢で始まったが、間の悪いことに、イラン国内の複数の場所で爆発があったと報じられると、即座にイスラエルがイランに攻撃したと解釈された。中東情勢の高まる緊迫化を警戒して売りがさらに加速した。全面安となり、日経平均の下げ幅は一時1,300円を超えた。好決算を発表した台湾積滞電路製造(TSMC)の米預託証券(ADR)が下落し、半導体関連銘柄の売りを促した。東証プライムでは、今年最多となる330銘柄が年初来最安値を付けた。

イランがホルムズ海峡を閉鎖する可能性が強く意識され始めると、原油価格が大きく上昇する。世界全体の2割に当たる日量2000万バレル(サウジアラビア産日量900万バレル、UAE産日量320万バレルを含む)の石油・石油製品がホルムズ海峡を通過している。GS(ゴールドマンサックス)の試算では、ホルムズ海峡が閉鎖された場合、原油価格は1カ月で20%上昇すると予測される。もし、そうなると世界的にインフレが再燃し、世界景気が停滞すると同時に世界の中央銀行が再び金融引き締めに転じざるを得なくなる。中東での地政学リスクが急速に高まって来たため、マーケットはリスクオフの度合いが強くなり、危険資産である株が大きく売られ、反対に安全資産とされるスイス・フランや金(gold)が買われた。

足元で俄かに急上昇している地政学リスクと米金利上昇だけでも株式相場には大きな下押し圧力となっているが、これまで株式相場上昇の主なけん引役だった半導体関連株の雲行きが険しくなってきた。少し前まで上げ過ぎなくらい急速に、且つ、高く上げたので少し前から利食い売りが優勢となっている。ちょっとしたことでも悪材料として過剰反応をする。その典型例が台湾積滞電路製造(TSMC)である。2024年1~3月期決算は市場予想を上回る良いものだったが、米国市場で5%安となり、台湾市場では7%安となった。その理由として指摘されていることは、2024年のメモリーを除く半導体業界全体の生産予想を従来の「10%以上の伸び」から「10%の伸び」へ同社が修正したことである。AIブームで上がり過ぎた期待の反動が起こっている。

中東での地政学リスクが高まり、中国経済も低迷しているので内需株の方が良さそうに思えるかもしれないが、現実はそうでもない。業種別日経平均株価の2023年末比の騰落率を見ると、「陸運」は下落率トップのマイナス11%、「サービス」が2位、「鉄道・バス」が3位と続くが、これらすべてが内需関連である。国内景気の先行きに自信が持てない証しである。また、食品などの値上げも一巡し、これ以上の値上げは圧倒的な地位を占めていない限り、客離れが怖くてできない。日本株は政策保有の株式の売却を進めるなど企業統治の改善具合が評価される一方、外需株も内需株もともに先行き不透明となって来ており、再び日本株全体が力強く上昇するにはある程度の長さの日柄が必要であろう。

円安・ドル高は一般的に日本株全体にはプラスの力として働く。しかし、度を過ぎるとマイナスの力の方が強くなり、全体として株価を引き下げる力へ転換する。

日経平均の日足チャートを見ると、中東の地政学リスクが急速に高まったことを背景に、今日も大きく続落して「長大陰線」で下落した。株価サイクル⑥(着実な下落局面)なので、株価は売り材料により敏感に反応するため今日のような急落は起こり易い。

33業種中30業種が下げた。下落率トップ5は、電気機器(1位)、機械(2位)、金属製品(3位)、精密機器(4位)、証券(5位)となった。

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