カンボジアの英雄マガワが、生涯を閉じたという。
ああ逝ったのか、長い間ありがとうと、日本在住カンボジア人の知人が涙していた。その身軽さで、100以上の地雷や不発弾除去の最前線にたった。ほかに言いようがない。「最前線」を駆け抜けた。
優れた嗅覚で火薬を感知し、軽さから起爆装置を作動させずに地雷や不発弾の位置を特定した。
市民の英雄だった。 マガワ、2022年1月死亡。享年8才。自然死。
哺乳類綱齧歯目ネズミ亜目。
おだやかに逝く。
衛星から位置を特定とか、人工知能を駆使などとは無縁の、アナログな英雄。
ばらまくだけばらまいて、後のことなんか考えもしない、愚かな人間の後始末につきあってくれた。
爆死なんていう馬鹿げた死に方でなくて、本当によかった。
ありがとうと、知人も知人の家族も手を合わせた。マガワのために、秘蔵の酒まであけた。
こんなにも、一市民に敬意を表され、遠い異国の地から献杯まで捧げられる英雄ネズミ。
同じだけの敬意を表される人間の英雄は、どれだけいるだろう。
人間の英雄は、見る方向や解釈が違えば大犯罪者だなんてことは、しばしばあることだ。