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バーナンキ米FRB議長の議会証言での発言要旨

[ワシントン 4日 ロイター] バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は4日、米議会上下両院合同経済委員会で証言を行った。証言内容は以下の通り。

 <追加措置に対するFRBの用意>


 米連邦公開市場委員会(FOMC)は引き続き経済動向を注視するとともに、物価安定の下で、より力強い景気回復を促進するため、必要に応じて一段の行動を取る用意がある。 


 <緩和手段>


 意思伝達の面で多くの手段が考えられる。低金利をどのくらいの期間、どのような条件の下で維持するかを伝えることは、追加緩和の1つの手段だ。


 もちろん市場で証券買い入れを継続することも可能で、これが2つ目の方法だ。


 比較的小規模な手段として、3番目に超過準備金利の引き下げも考えられる.

 ツイストオペについては、市場価値が正確に一致するわけではない。保有証券の価値が変わる可能性はあるが、非常に小幅で刺激効果の点では大きくない。


 経済の行方が分からないことから、どんな案も検討の対象から決して外さない。将来を予想することはできない。(量的緩和第3弾、QE3のようなものを)実施する差し迫った計画はない。


 <ツイストオペの長期金利への影響>


 (長期金利を)およそ20ベーシスポイント(bp)押し下げるとみている。これはフェデラルファンド(FF)金利の50bp低下にほぼ匹敵する。これは重要な一歩だが、いくつかの点で状況を大きく改善させるものではない。


 われわれはこれを意義深いと考えているが、経済への著しい支援になるとは思っていない。一定の追加金融緩和をもたらし、雇用創出および成長を幾分支援すると考えている。


 米経済は現在失速寸前にあるため、これは特に重要だ。われわれは回復が継続し後戻りしないよう、また失業率が継続的に低下するよう確実にする必要がある。


 正確な数値は持ち合わせていないが、適度な支援だと考えている。状況を劇的に好転させるものではない。だが物価を安定水準近くに維持するとともに成長を支援する上でも有益なはずだ。


 <景気支援の手段>

われわれは手段を有している。どんな決定についても費用対効果を評価し、経済に適切な刺激を及ぼすことを確実としたいことは明らかだ。 

 <回復>


 危機からの回復が、われわれが期待していたより、全般的にかなり弱かったことは明らかだ。最近の政府の経済指標の改定では、リセッション(景気後退)がこれまでの予想より深刻で、回復も予想より弱かったことが示されている。実際、政府の統計が出揃っている今年の第2・四半期までを見ると、米国の総生産は危機前に達成した水準を依然として下回っている。


 経済成長の鈍化は、雇用、および家計収入の伸びの鈍化につながった。


 <インフレ>


 連邦公開市場委員会(FOMC)で予想されたように、一時的な影響が弱まり、インフレは穏やかな状態になり始めている。とりわけ原油やその他多くの商品相場は横ばいとなったか、あるいは高値から下落した。自動車生産が増えてきたことで、乗用車や小型トラックに対する価格圧力は緩和され始めた。重要なことは、年初以降のインフレ上昇が経済に根付いたようにはみえないことだ。


 <インフレ期待>


 エネルギーと食品価格は今年は数々の理由により上昇したが、これによる影響は現在は低下しており、金融市場におけるインフレ期待は、予想を発表する立場にある人々の間でも一般の間でも、かなり低く、またかなり安定している。

出口戦略に関しては、6月に打ち出している。われわれはいつでも政策を転換させられる手段を備えている。時期が来たら、物価安定に向け必要なことはすべて行う。現在は、率直に言うと、物価安定より完全雇用の実現の方が先は長い。

 <出口戦略について>


 技術的には実行可能と強く確信している。われわれはインフレを非常に注視する。


 必要に応じて政策を確実に巻き戻すことができると断言できる。


 <成長の阻害要因>


 入手するデータは、より長期的な要因が引き続き回復ペースを抑制していることを示唆している。消費者動向が緩慢な回復ペースに表れており、また回復ペースの鈍さに寄与している。


 家計はこれまで支出に関して極めて慎重だ。住宅価格の下落や金融資産の目減りが家計資産を減少させており、多くの家庭が引き続き高債務に苦しんでいるか、借り入れが以前ほど容易ではないためだ。


 だが消費者信頼感を悪化させている最大の要因はおそらく雇用市場の低迷だ。

<金融市場の緊張>

 多くの家計、中小企業、居住・商業向け建設業者にとって、信用は引き続きひっ迫した状況が続いている。ぜい弱なバランスシートや収入見込みが、多くの潜在的な借り手の信用リスク認識を高めていることが一因だ。


 また最近の金融市場では、国内外の財政不安などを背景に、過度な変動やリスク回避が続いている。


 国内では、大手格付け会社による米長期信用格付けの引き下げや、連邦債務上限引き上げをめぐる論争が、今夏の金融市場の混乱を招いた。


 国外に関しては、ギリシャなどユーロ圏諸国のソブリン債をめぐる懸念や、欧州銀行が抱えるソブリン債に対する不安が、世界の金融市場に緊張をもたらした大きな要因だ。


 <金融政策の限界>


 金融政策は非常に強力な手段であるが、米経済が現在直面している問題に対する万能薬ではない。民間セクターとの緊密に提携しながら、健全な成長および雇用創出を促進することは、すべての経済政策担当者が共有する責任である。


 財政政策も極めて重要だが、雇用市場、住宅、貿易、税制、規制などに関連する他の政策も同様に重要な役割を担っている。

<財政上の課題>

 第1の重要な目標は、財政の長期的な持続可能性を達成することだ。連邦予算は現在、明らかに持続可能な軌道に乗っていない。


 超党派委員会は、今夏に制定された歳出制限に加え、1.5兆ドルの追加の赤字削減を向こう10年で達成するという責任を負っている。この目標の達成は非常に重要なステップだ。ただ、財政の持続性を実現するには一段の対応が必要になるだろう。


 第2の重要な目標は、現在進行中の景気回復を阻害する可能性のある財政措置を避けることだ。


 これら2つの目標は当然、相容れないものではない。将来的な赤字を長期的に削減するために信頼ある計画を導入することは、短期的な回復に向けた財政上の選択肢が示唆するものに留意することを排除するものではないからだ。


 第3に、財政政策は長期的な成長および経済的な機会の促進を目指す必要がある。


 <欧州への米銀エクスポージャー>


 米金融機関は、ポルトガルやアイルランド、ギリシャのソブリン債へのエクスポージャーを縮小させており、イタリアやスペインのソブリン債へのエクスポージャーは極めて小規模となっている。イタリアやスペイン、フランスの銀行システムへのエクスポージャーはずっと大きく、経済全般という点では勿論、エクスポージャーは相当大規模と言える。

 <ギリシャの債務不履行による影響>


 米銀行のギリシャへの直接的なエクスポージャーはわずかだが、無秩序なデフォルト(債務不履行)によって他のソブリン債がデフォルトしたり、欧州銀行が圧迫されるような事態となった場合は、世界の金融に非常に大きなボラティリティが生じ、米国の金融システムだけでなく米国の経済にも非常に大きな影響が及ぶ。万一そのような事態になれば、非常に深刻なリスクとなる。欧州が引き続き現状に対応しようとしていることが極めて重要なのは、このためだ。


 <欧州の危機に対する米国の役割>


 残念ながら、指摘の通り、米国は傍観者のようなものでしかない。欧州諸国は(ユーロ加盟)17カ国が受け入れられる解決策を模索している。このため、これは経済的な問題ではなく、政治的な問題だ。


 欧州各国の努力を支援し、克服に向け積極的に対応することを働きかけること以外に良い提案はない。現在のように不透明感が継続しているだけで、米経済にマイナスの影響が及ぶと考えているからだ。


 <ドル相場>


 ドル相場は2008年夏頃と同じ水準近辺にある。安全への逃避の流れに伴い、上下変動はしているが、実際に一定の基調があるわけではない。 


 <中国人民元相場>

 現在、われわれは中国の為替政策が世界経済の正常な回復過程を阻害している可能性があることを懸念している。


 米国や欧州などの先進国の経済成長が非常に緩慢になっているのに対し、新興国経済はかなり速いペースで成長しており、回復には現在、2つの異なるペースが存在する。


 回復がより正常で均衡がとれている場合、新興国から先進国により多くの需要がシフトするとみられる。中国の為替政策がそのプロセスを阻害しており、ある意味、回復過程を阻害している。


 <中国の為替政策>


 為替政策に大きく起因するインフレ高進など、自国に問題をもたらしている点は別にして、中国の為替政策はこれまで、世界の調整に対する一定の阻害要因となっている。


 言い換えれば、世界経済の回復が二極化しているということだ。新興国が高成長を遂げる一方、先進国の回復は非常に緩慢なペースだ。通貨に一段の弾力性が与えられれば、より均衡の取れた成長軌道が実現できる。


 中国の為替政策は米中関係だけでなく、第三国の通貨政策にも影響を与える。


 <銀行の規模>

規模による利点はある。言及された国内総生産(GDP)の60%という数字は、自国のGDPを超える規模の銀行を持つ多くの国と比べると大幅に低い水準にある。

 正しい対応は、こうした銀行に追加のコストを導入し、監督を強めることだ。これにより、不必要な規模と活動を制限し、リスクテイクの縮小に向けた動機を与えることができる。金融規制改革法(ドッド・フランク法)が目指しているのはこのことだ。


 <ウォール街での抗議活動>


 総じて国民は経済情勢に大きな不満を感じているといえる。抗議者らは金融セクターの問題が混乱を引き起こしていると主張しており、正しい側面もある。彼らは政府の政策対応にも不満を示している。


 ある意味でわたしは抗議活動を責めることができない。9%に及ぶ失業率や非常に緩慢な経済成長はあまり良好な状態とは言えない。抗議活動に特別配慮するつもりはないが、他の人と同様もわたしも足元の経済動向に不満を感じている。

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