元祖SHINSHINさんのブログ
奔放に書きたいことを書く慎太郎
件の書籍も終盤にさしかかってきた。
どうやら表題の結論に達しそうな気配だ。
彼はさまざまなジャンルの小説を書いているという。
たとえば、日本におけるハードボイルド小説・始祖の一人なのだという。
また、ファンタジー風のものも書いており、
「院内」という小説にスポットライトが当たっていた。
院内といっても病院ではなく、国会のことである。
この小説に関しては、対談者全員一致で最高の出来だと評されていた。
彼は書きたい時に、書きたいことをひたすら書いているのであろうと推測されていた。
それが、売れるか売れないかなど、一切考えていないと。
そして、この「院内」に対する慎太郎の自己評価をみても、
この出来の良さなど考慮すらしていない様子で、
恐らく彼は自分の才能すら自分で理解していないのだという。
初期短編で「北壁」という登山ものでは、
行為を描くとまことに見事と評されていた。
が、心理描写などは下手くそだそうだ。
「完全な遊戯」に対する激しいバッシングと三島由起夫の援護射撃、
沢木耕太郎との確執、慎太郎の天皇論、深沢七郎の不敬小説で死人が出た話、
アンチ田中角栄、岡本太郎との交友、などなどオモロイエピソードも満載。
慎太郎を嫌いだという人々が作品を評するわけだから、
よいしょなどあるわけもなく、
ここに示された作品に対する批評は、
書き手に回ろうとする人にとっては有益なこと間違いがない。
今度は慎太郎の作品に直に当たって、そのエッセンスを盗むしかないだろう。
なにやら、慎太郎という男が、でっかいネコに想えてきた。
★「石原慎太郎を読んでみた」
栗原裕一郎・豊﨑由美著 原書房 1,800円+税 2013.9.4.発行
PS:読売だったか日経だったか忘れたが、
ある作家が「最近は書きたいことを書くようにしている」と述べていた。
大沢在昌も「新宿鮫」を同様な思いで書いたと語っていた。
やはり、缶詰から名作は生まれない。
PS2:慎太郎は今でも老若男女かかわらず、他人の作品をいろいろ読んでいるそうだ。
映画も見逃さないらしい。だから、今でも現役の作家なのだろう。
PS3:「院内」のように埋もれていた名作があったという事実。
転じると、電子書籍にしてたとえ売れなくても、
この世でたった一人でも感動してくれたら、
それは名作なのではないだろうか。