迫る、注目の米大統領選!“ブラックスワン”発生の可能性も!?

著者:津田隆光
投稿:2016/10/27 12:04

11・8以降に起こり得る3つのリスクシナリオについて

先週19日、第3回米大統領候補TV討論会が終了し、その中身とその後の世論調査結果を見る限り、概ね選挙戦の軍配はヒラリー・クリントン氏に上がったと見てよさそうですが、まだまだ油断大敵というのがクリントン陣営の共通認識と言えるでしょう。

一方のドナルド・トランプ氏は、自身の陣営からも劣勢であることを認めるコメントが出ている通り、余程の相手方の大失策や僥倖がない限り、逆転勝利は非常に厳しい状況であることに疑念を差し挟む余地はなさそう。
特にトランプ氏は、19日に行われたTV討論会でクリントン氏が話している最中に、小声で「Nasty woman(嫌な女)」と口走ったことがマイクに拾われたことが仇となり、共和党支持の白人女性層から総スカンを食らう結果に。

ある調査では、仮に538人の選挙人すべてが女性であった場合の大統領選挙結果は、クリントン氏:458、トランプ氏:80という圧倒的大差となり、過半数の270どころの話ではない程のワンサイド・ゲームになるというシミュレーション結果も。

そのような状況下、当のトランプ氏の強気姿勢は相変わらずで、ある集会で曰く、「この偉大で歴史的な大統領選の結果を完全に受け入れる。もし私が勝てば、の話だ。」との発言も。

まさに、人気映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」の悪役であるビフ・タネンの映画の中のセリフのようと思った人は少なくないかもしれません。(ちなみに、そのビフ・タネンのモデルはトランプ氏であることは有名な話。)

そんな中、米大統領選挙の投開票が行われる11月8日以降に起こり得る3つのリスクシナリオは以下の通り。

1. トランプ氏の大逆転勝利のケース
2. トランプ氏、敗北を認めず訴訟を起こすケース
3. 民主党、地滑り的(圧倒的)勝利[Wave election]のケース

上記1のケースでは、あるシンクタンクの試算によれば、株価は世界的に10~15%下落し、通貨の中でもメキシコ・ペソは25%ほどの暴落をするとのこと。これはいわゆる“ブラックスワン・イベント”となり、世界的なリスク回避フローが発生する可能性も。

上記2のケースは確率論的には十分あり得るとの見方もあり、そうなるとマーケットは不透明感を増すこととなり、結論が出るまではリスクを取り辛い投資環境となりそうです。

そして、上記3のケースでは、一見安定政権樹立のイメージがあるものの、あるレポートに記載されていた内容では、1932年以降6回の地滑り的勝利があった内の4回のケースにおいて、選挙後3カ月以内にS&P500が2~4%下落した事例があることのこと。
特に、国民皆保険を政策の一丁目一番地とするクリントン氏の場合、薬品やバイオテック関連株がネガティブな動きをすることが想定され、また相続税(財産税)の最高税率が65%(現行:40%)に引き上げられることで、景気のシュリンクが引き起こされる可能性も指摘されています。

あくまでこれらは想定し得るリスクシナリオの一部ということで、発生する確率はそう高くはないかもしれませんが、やはり「選挙は水物」だけに注意が必要。

いずれにせよ、来月8日の大統領選挙を境に投資環境がガラリと変化してしまう可能性について、前もって自身のリスクシナリオを立てる方が無難と言えそうです。
津田隆光
マネースクエア チーフマーケットアドバイザー
配信元: 達人の予想