政策待ちで模様眺め、円相場にらみの展開続く

著者:冨田康夫
投稿:2016/05/24 18:22

明日の東京株式市場見通し

 25日の東京株式は、伊勢志摩サミットの開催を目前にして買い手控え姿勢が一段と強まりそうだ。そのなかで材料視されるのは外国為替市場での円相場の動向。円高・ドル安基調が続けば、輸出関連の主力株中心に売り優勢となりそうだ。

 市場関係者からは「24日の東証1部の売買代金は、1兆6658億円と前日に続いて今年最低を更新した。伊勢志摩サミットを控えているといっても、あまりにも売買エネルギーが低水準に陥っているのは気に掛かる。市場参加者の姿勢を消極的にしているのは、消費増税の成否を巡って不透明感が強まっているためではないか。消費税の先送りに加え、追加金融緩和や財政出動などの政策が明確になれば、膠着相場から上放れることになる」との見方が出ていた。

 24日の東京株式市場は、閑散商いのなか買い意欲に乏しい展開に終始した。朝方売り先行で始まった後もみ合い、後場に入ると下落幅を広げる展開となった。日経平均株価終値は、前日比155円84銭安の1万6498円76銭と続落した。

24日の動意株

 松井建設<1810>=続急伸で、1993年以来23年ぶりに1000円台回復を果たした。
同社は需要文化財の復元工事に実績が豊富で、熊本地震で大きな被害を受けた熊本城修復の担い手として物色人気を集めている。もっとも、強烈な上昇トレンド形成には需給先行の感が強い。発行株数3000万株程度と小型で浮動株比率も極端に低く、実質的な青空圏で売り圧力が希薄である点が最大の強みだ。一方、短期資金攻勢の格好の対象となっているようにもみえるが、時価予想PERはわずか7倍台、PBRもようやく1倍を上回ってきた水準であり、実態比較で割高感が全くないことも買いを勢いづかせている。

 sMedio<3913>=後場に入り一時ストップ高。
同社はきょう、IoTゲートウェイ機器(無線LANルーターやスマート家電など)開発に必要なソフトウエアソリューションを発売したと発表。これが材料視されているようだ。このソリューション「sMedio IoT Gateway Device Solution」は、一般的なインターネットアクセスルーター機能に加え、異なる無線通信規格、IoT通信規格間の相互接続を可能にする。これにより、無線通信規格や接続規格の壁を越えて、さまざまな機器を相互接続、管理するIoTゲートウェイを開発することが可能になる。

 ブイ・テクノロジー<7717>=上値指向に弾み。
スマートフォンや大型テレビ向けで市場急拡大が見込まれている有機ELに対し関連メーカーの経営資源シフトが急だ。米アップルが来年にも投入するiPhoneの表示装置に有機ELパネルを採用する方針にあることが、これまでにない構造的な需要拡大期待につながっている。一方、テレビ向け有機ELも4Kなど高精細大型テレビの普及促進を背景に、「面積ベースでの増加傾向に歯止めがかかることはない」(業界関係者)といわれ、設備投資需要として恩恵を前倒しで享受する製造装置メーカーの業績飛躍が期待されている。

 リズム時計工業<7769>=急伸し年初来高値を更新。
同社は23日取引終了後に、937万5000株(自己株式を除く発行済み株式数の9.75%)、15億円を上限とする自社株取得枠を設定したと発表した。取得期間は6月1日~9月30日まで。また、同時に10月20日付で自己株式の消却を行うことも明らかにした。消却する株式数は、今回取得する自社株および2000万株としており、需給改善などが期待されているようだ。

 JCRファーマ<4552>=堅調。
ヒト成長ホルモン製剤を手掛けるほか、バイオシミラー(後続品)への展開に経営の軸足を置いている。国内初となる他家由来の再生医療品を発売していることでマーケットの注目を浴び、業績も13年3月期以降、増収増益を続けるバイオ関連の優等生銘柄。また、困難とされる脳内への薬物搬送に同社の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo」が業界の注目を集め、バイオ関連株人気のなかでも新たな存在感を見せ始めた。

 ナブテスコ<6268>=7日続伸。
東海東京調査センターが23日付で同社のレーティングを「アウトパフォーム」に引き上げるとともに、目標株価を2250円から3080円に大幅修正しており、これを材料視する買いを呼び込んでいる。同調査センターでは「16年1~3月期業績は会社想定を上回ったものと推測される。産業用機器事業の採算改善が目立った。従来からの事業拡大だけでなく、売価引き上げが奏功してきたと考えられる」と評価している。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想