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財布にされないように気をつけないと

証券取引等監視委員会のサイトから



NO4「不公正ファイナンスへの対応(その1);不公正ファイナンスの特徴」
証券取引等監視委員会総務課長 佐々木清隆

前々回のこの場で、最近の証券不公正取引の傾向として、第三者割当増資等の発行市場でのファイナンスを悪用して流通市場での不公正取引につなげる「不公正ファイナンス」の問題についてご紹介した。3月決算の時期が近づく今回から何回かに渡り、この問題についてもう少し詳しくご紹介したい。

既に触れたとおり、「不公正ファイナンス」は法律上の定義があるわけではないが、この数年の事例を踏まえると、共通した傾向が見られる。

まず、不公正ファイナンスの当事者となる上場企業は、新興市場に上場されている企業であることが多い。上場時においては、製造業やサービス業等実態のある業務を行っていたが、上場後、経営不振に陥り、経常赤字が連続し、資金調達に困難を来たしている。株価も低迷し、監査法人からもGC(going concern)に関する注記が付けられていることが少なくない。後で触れるように第三者割当増資等を繰り返す過程で株主構成も大幅に変わり、また業務内容も「投資事業」を中心としたものに変化する。

このような経営不振企業の経営者に対し、いわゆるアレンジャーといわれる人間(元日系・外資系証券マン等)が、国内の投資事業組合や海外のファンドに対する第三者割当増資や新株予約権の割当を提案してくる。このようなファイナンス自体は、会社法上の手続き(取締役会決議等)を経ている限りは合法であるが、割当先やファイナンスの内容を見ると、きわめて怪しい点が見られる。

まず割当先としては、税率の低い海外のタックス・ヘイブンや規制の緩いオフショア金融センターに設立された特別目的会社(SPC)がよく見られる。中でも、英領バージン諸島(British Virgin Islands; BVI)に籍を置くSPCがよく利用されるが、これはかなり怪しいと考えている。

英領バージン諸島は、数あるオフショア金融センターの中でも、特に金融機関口座開設時やSPCを設立する際の顧客の本人確認が緩く、例えばペーパーカンパニーであるSPCの裏にいる真の所有者(beneficial owner)についての情報を秘匿するために利用されることが多い。

そのため、国際金融界では、英領バージン諸島については、金融証券犯罪やマネーロンダリングに悪用されるリスクが高いというのが常識であり、まともなビジネスを行おうと考える場合には、英領バージン諸島を利用することは通常ない。

国内の投資事業組合に対する割当の場合でも、いくつもの投資事業組合を関与させて、真の所有者を見えにくくしている点は、同様の問題がある。また実態のある企業等を割当先とする場合でも、増資で調達する資金の規模と比較して、到底増資に応ずるだけの資金力がないと思われる場合など明らかに合理性のない事例も少なくない。

次にファイナンスの内容を見ると、発行済株式総数の数倍から中には数十倍に相当する新株の発行が行われるような第三者割当増資、新株予約権の割当が多く、既存の株主の権利が大幅に稀釈化(dilution)することが多い。これも会社法上の手続きを踏む限り違法ではないが、既存の株主の権利保護の観点から、きわめて問題であり、この点は後述するように、先般取引所の自主ルールで規制が強化された。

またファイナンスや資金調達の目的として、開示資料の中では、「借入金の返済」、「研究開発費」、「M&A等事業再編」等があげられているが、増資後の企業行動を見ていると、調達された資金は、当該企業から別の企業等(反社会的勢力のフロント企業等と繋がっていることもある)に対し、投資、融資の形で流出したのち返済されず、翌期には特別損失が計上されることも少なくない(むしろ当初から返済されないことが仕組まれていることも多い)。

このような企業は、取引所に上場されていることで公開市場から資金調達をするためだけに利用される「箱」となっていることから、「箱企業」と呼ばれる。このような箱企業が証券不公正取引でどう利用されているのか、次回ご紹介したい。
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