麦にゃんさんのブログ

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東京メトロ

 東京株式市場で私鉄株の低迷が続いている。
業種別日経平均株価の「鉄道・バス」は1年前と比べると1%安の水準。同期間に30%上昇した日経平均に比べ戻りが鈍い。私鉄各社は流通やホテルなど多角化事業の不振に歯止めがかからず、業績底入れのメドが立たないためだ。国内の消費不況の直撃を受けた格好で、私鉄株はもはや「ディフェンシブ銘柄」とはいえなくなってきた。
 首都圏の私鉄大手7社(東京急行電鉄、小田急電鉄、東武鉄道、京王電鉄、京浜急行電鉄、京成電鉄、相鉄ホールディングス)の2010年3月期の連結営業利益は、合計で1889億円と前期比19%減る見通し。鉄道など運輸業は14%減、不動産は9%減にとどまるのに対し、運輸・不動産以外は49%減とほぼ半減する。
 「不況への抵抗力のなさをさらけ出してしまった」(東急の越村敏昭社長)。東急のリテール(小売り)事業の今期の営業利益は34億円と69%減少する見込み。傘下のスーパー、東急ストアでは過度の高級路線への反省に立って、08年度から約1500品目の価格を1~3割引き下げた。購入品数が増えると期待したが、結果は客単価が下がっただけ。「値下げ当初は販売数量が伸びるが、一瞬で終わってしまう」(鈴木克久副社長)。
 小田急は今期、ホテル業の営業損益が42億円の赤字(前期は39億円の赤字)になりそう。主力のハイアットリージェンシー東京(東京・新宿)は足かけ5年の改装工事が前期に終了、今期は反転攻勢をかけるはずだった。だが、金融危機を受けて欧米からの宿泊客が急減し、09年4~9月期の客室稼働率は54%と期初想定(85%)を大幅に下回った。値下げ効果で下期の稼働率は70%台をキープしているが、売上高は減少傾向から抜け出せていない。
 鉄道沿線で宅地や百貨店、娯楽施設を運営して集客を図る私鉄のビジネスモデルは、阪急グループの創業者、小林一三氏が構築したとされる。だが、私鉄各社の多角化事業の不振は出口が見えず、長年続いたビジネスモデルも見直しを迫られかねない。きっかけの1つになるかもしれないのが、2010年度にも予定されている東京地下鉄(東京メトロ)の株式上場だ。
 東京メトロは連結売上高の8割強を鉄道など運輸業が占める。運輸業の割合が2~4割程度の私鉄各社に比べ、業績の安定感が際立つ。09年4~9月期の連結営業利益は前年同期比8%減の466億円で、小幅減益にとどまった。梅崎寿社長は「多角化事業の拡大が成長には必要だが、百貨店や都市ホテルなど私鉄型のモデルは採らない。地下鉄と相乗効果のある事業を充実させたい」と強調する。駅地下街の運営や不動産賃貸などを中心にする考えのようだ。
東京メトロが上場すればどの程度の時価総額になるのか。首都圏の私鉄7社の連結PBR(株価純資産倍率)の平均は2.09倍。東京メトロの09年9月末の1株当たり純資産は547円。単純にかければ株価は1143円となり、時価総額は6642億円となる。私鉄で時価総額最大の小田急(5350億円)を上回り、西日本旅客鉄道(JR西日本、6310億円)に肩を並べる。
 業績の安定感が評価されれば、ディフェンシブ志向の投資資金が私鉄株から東京メトロに流れる公算がある。株価に下落圧力がかかり始めれば経営陣も重い腰を上げざるをえないだろう。先週、西武百貨店有楽町店、四条河原町阪急という元は私鉄系だった百貨店の閉鎖発表が相次いだ。今後、これまで手を付けなかった傘下の不振企業のリストラや事業再編が表面化する可能性もありそうだ。
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