そら豆の株予報さんのブログ

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銀行も商機と走る投資信託の売り勧誘

(日経電子版より)

 顧客に保有している投資信託の解約と別の商品の購入を同時に勧める乗り換え営業は、長らく証券会社のお家芸とされていた。しかし、今年の驚くほどの株高を受け、今や銀行もビジネスチャンスとばかりに積極的に営業攻勢をかけている。セールストークは「今売れば、税金は半分で済みますよ」。この1年間で日本人の手を離れ、外国人に渡った日本株の総額が14兆円を超えたのは、こんな営業戦略もある程度「関与」している。

 26日は日経平均株価が4日ぶりに反落したものの、25日に付けた戻り高値1万5619円までの年初来上昇率は50.3%に達した。このまま12月30日の大納会まで横ばいだとすると、年間上昇率は1952年の118.4%、72年の91.9%、51年の62.6%、60年の55.1%に続いて5番目の記録となる。朝鮮戦争特需にわいた51~52年、岩戸景気の最中の60年、日本列島改造ブームの72年に次ぐ値動きである。

 といっても、かつては日本人が積極的に買って大幅高を実現したのだが、今年はグラフに示すように、外国人の一手買いといってもいい状況。11月第2週(11~15日)だけで1兆1720億円も買い越したこともあり、昨年11月12日から今年11月15日までの累計買越額は14兆1320億円に達した。これに対する売りは、個人の7兆614億円と、年金基金などを管理する信託銀行の4兆7863億円が目立っている。

 この東京証券取引所の上場株の時価総額の3%を超える巨額の資金移動を前に、その他の投資主体は「誤差の範囲」にとどまっている。しいて言えば投資信託だけは4月以降、8664億円の買い越し。4月以降に8兆2821億円を買い越した外国人と比べると、10分の1程度の存在感ではあるが、株高を商機とみて日本株投信などを売り込んだ成果があったことは間違いない。

ただ、米国や英国では株価が上昇すると、個人の個別株売りと個人の投信買いがもっと太い流れになるのに、日本では投信買いの勢いが細い。その1つの要因が、投信にも節税対策売りが大量に出ていることだ。特に日経平均連動の契約型投信などは基準価格が日経平均に合わせて年初来で約50%上昇したため、「売るなら今でしょ」と言って、銀行などが積極的に乗り換え営業を仕掛けている。

 例えば日経平均連動投信を昨年末に300万円購入した顧客の場合、現時点での利益は約150万円になる。購入時に払う販売手数料や解約時に負担する信託財産留保額を除いて考えると、今年中(受渡日が12月30日まで)に解約すれば、支払う税金は150万円に税率の10.147%(復興特別所得税を含む)を掛けて15万2205円になる。しかし、解約が来年になれば税率が20.315%(同)にアップするので、30万4725円に跳ね上がるのだ。高齢者世帯では1カ月の夫婦2人分の基礎年金を上回る税負担増になる。

 具体例を挙げれば、みずほ投信投資顧問が運用するMHAM株式インデックスファンド225は直近の純資産残高が1675億円と昨年末の1443億円に比べて16%増えている。しかし、もし解約がなければ、純資産残高は日経平均並みに約50%増えているはずだ。この間、解約が購入を上回った結果、口数は約23%減少した。三菱UFJインデックス225オープンも年初から今までに口数が約20%減少した。三井住友225オープンも同じ期間に口数が21.6%減少した。

 銀行系運用会社の商品もオンライン証券会社で取り扱っているので、銀行の営業攻勢とは無関係に、顧客が自らの判断で解約したケースも多いと思われる。ただ、知人の80歳代の年金生活者は地方銀行から、税率が低いうちに日経平均連動投信を解約し、代わりに外国の債券に運用する投信や、一時払い終身保険を勧められていた。最近の銀行による保険のセールストークは、名義人の死亡時に口座が凍結される銀行口座と異なり、お金がすぐに息子や娘など指定した受取人に支払われることなのだそうだ。

それにしても、日経平均が戦後5番目の上昇率を記録するほど、日本経済が強くなったようには見えないが、ハイテク企業などが株式を公開している米国のナスダック市場を見ると、株価を押し上げる力は想像以上に強そう。もともと海外の投資家から見ると、日本株は全体として景気敏感株。つまり、世界の景気が良くなりそうなときに買われ、悪くなりそうなときに売られる傾向があり、騰落のリズムはナスダック総合指数に似ている。

 グラフはナスダック総合指数が1971年2月5日を100として計算しているのに合わせ、円建ての日経平均とドル建ての日経平均を同日を100として描いている。ドル建て日経平均を見ると、1998年ごろからナスダック総合指数とほぼ同じ軌跡をたどっている。日本の民主党政権下の3年間にやや引き離された感もあるが、ここ1年ほどは再び似たような動きを示している。

 そのドル建て日経平均だが、11月25日には153.63ドルと、円建て日経平均が年初来高値を付けた5月22日の水準である152.03ドルをすでに上回っており、リーマン・ショック前の高値(2006年5月8日の155.36ドル)も指呼の間にとらえている。もしナスダック高に刺激されて、この水準を上回ると、情報技術(IT)バブルが起きた2000年以来の高さになる。

 ではそのナスダック総合指数はどこまで上昇するのだろうか。最近の上昇ぶりをみて、すでに「バブルだ」と指摘する向きもある。ただ、月間終値ベースの記録だが、ITバブルの時には98年12月末に2000に乗せてから、01年3月末に2000を割るまで2年3カ月を要し、この間、00年3月10日に5048.62の最高値を付けた。当時に比べれば、バブルといっても、まだまだ小さい印象がある。

米国は早晩、テーパリング(中央銀行による資産買い入れ政策の段階的縮小)を始めるだろう。しかし、「始めた後にも弱めの経済指標が多く出てくることが予想され、景気刺激的な金融政策を当面、続けざるを得ない」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)。かといってたたでさえ供給過剰構造が続く実体経済にお金が回るわけではない。結局、不動産や株式の価格だけが押し上げられる構図が続くことも十分ありうる。

 となると、実体経済が弱いのに、株価だけは市場参加者が「もう上がらないでほしい」と思うぐらいに上昇してしまう可能性がある。しかも、日銀をはじめ世界の中央銀行は異次元のリスクをとったままだ。果たしてこんな構造が維持可能なのかどうかは、誰も自信を持って予想できまい。個人投資家にとって悩ましいのは、バブルと反動安のどちらが来るのか判断に迷うタイミングで、少額投資非課税制度(NISA)が始まることだ。

 グラフは前年の日経平均の上昇率が高かったタイミングで、投資を始めると、その後5年間は上値余地が小さく、下値余地が大きくなる傾向があることを示している。NISAの非課税期限は5年目の年末までだ。バブルが来ればメリットは最大限、享受できるが、反動安に引きずり込まれ、売るに売れなくなれば、投資損失が出ているのに課税される場合がある。

 株価はやみくもに上がればいいというものではない。急落懸念を抱えながらの株高など望んでいる人は少ないだろうし、もし中央銀行の政策がこんな状況を助長させるのならば、中央銀行への信認そのものが問題になる恐れもある。

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